社会教育評論

人間の尊厳、自由、民主的社会主義と共生・循環性を求める社会教育評論です。

竹の自然循環の宝と公害

竹の自然循環の宝と公害

 

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 地域資源の開発は、持続可能性をもつ地域循環経済の創生に重要な役割をもっています。これには長期的な視点をもつことが必要です。そして、一歩一歩、それぞれの生活必需品に基づいての開発が求められるます。とくに、エネルギーや食糧は地域で自給率を高めていくことが大切です。

 長期的に地域発展をみるためには、若い人たちの未来志向の気概が不可欠です。その教育は重要なことです。若い人々を支える地域での生涯学習の構築をどう作り上げていくのか。その課題があります。

 学校の教師は地域循環型経済のために、生きる学力、地域発展の学力、未来社会を作っていく学力が求められます。それには最先端の科学・技術と同時に、新たな地域社会の仕組みを作り上げていくための歴史文化や社会科学の知識、人間的な尊厳と絆の文化・芸術性をもつ人間力が重要です。また、ここには地域の人々の連携の学びも大切です。

 人間の手が加わった自然の循環は、放っておけば大きなマイナスにななります。江戸時代に孟宗竹など中国から輸入した竹は、そのことを教えてくれます。

 日本での農山村の多くは、過疎化が進み、竹を管理していくのが厳しい状況になり、農地までにも竹が進出し、ひどいところでは宅地をあらして、竹の公害といわれるようにななります。竹は人間の生活にとって、昔からさまざまな面で利用されていたのです。

 

1、竹と古来からの日本人の暮らし

 

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 竹は人間が生きていくうえで大切な素材です。竹は、タケノコから建築材、土木材、工芸品、庭園などさまざまな用途に使われてきました。現代でも竹の新たな利用としての堆肥としての利用があります。さらに、薬品、竹の製紙、竹からのセルロースナノテクの工業素材の利用などが考えられます。

 竹の生命力、成長力はすさましいものがあります。あっという間に大きく伸びていくのです。それも節をもつことによって、丈夫に強い風にも柔軟性をもって耐えうるのです。古来から里山の竹林は人々の暮らしにさまざまな用途に使われてきたのです。

 しかし、竹のもつ生命力、成長力は放っておけば、農林業に大きな被害をもたらすのです。竹によって、畑や田んぼ、森林を侵食していくのです。竹は農林業にとって、大きなやっかいものになっているのが、現代日本の過疎化した農山村の現状です。

 現代は、素晴らしい人間の暮らしにさまざまな効用をもっている竹の積極的な利用が求められています。その評価は人材などの条件さえ整っていけば社会的に十分に高まっていきます。新たな科学技術を利用しての経済性を発揮していけば、さらに、その価値が大きくなっていきます。

 竹は子どもの遊びの道具にもなっているのです。竹馬に乗って、子どもは高くなった気持ちで歩くのです。子どもの平衡感覚を身につけていくうえでも大いに効果を発揮するものです。もともと、馬に見立てて走るということでの遊戯です。

 竹とんぼの遊びは古来から中国、ベトナムなどアジアの遊びの文化として、広く行われてきたものです。空高く遊ぶ道具として、子どもの空を飛ぶ夢として、昔から迎えられていたのです。自分から飛んでいく遊具は飛ばすということが風に乗って舞い上がっていく楽しさを教えてくれるのです。古くから空を飛ぶ夢が子どもの心を豊かにしてきたのです。凧揚げも空高くとんでいくようすを自分自身が糸で操作している喜びを感じさせるのです。

 

2、林野庁「竹の利活用推進に向けて」提言

 

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 農林水産省林野庁は、平成30年10月に竹の利活用の推進について提言をしています。林野庁の提言を要約しながら、竹の持つ性質から現代的に地域の見捨てられた貴重な資源として大いに評価してみることにします。

 林野庁の提言では、竹は古来から日本人の暮らしに積極的に利用され、文化にも大きな影響を与えてきたということから、それを現代的に積極的に利用していことすることです。それらは、竹製品をプラスチックなどの代替え品、製紙材としての見直など、竹を利活用して地域経済を活性化していこうとする提言です。

 竹は利用しないと、その成長性と地下茎という性質から他の森林や農地に公害となって現れるということで、管理しなければ大きなマイナス要因になるのです。

 竹林の整備は竹材の地域資源と食糧としてのタケノコです。竹林の管理ができていないところ、つまり放置したとろでは、周囲の森林に地下茎をとおして浸食して、竹が優占して森林のもつ多様な生態系機能が失われていくというのです。

 林野庁は、管理竹林、放置竹林、もともと竹林でなかった拡大竹林、木材になる人工林と混合の木竹混交林と、4つに分類をしています。管理されていない竹林の整備には、竹を駆逐して、次世代の樹木を造成し、継続的な見回りの管理が大きな課題となっているのです。

 竹の伐採には搬出もコストの問題も含めて大きな課題になっているといのです。現状では竹の伐採コストが高く、竹の資源を持続的に利用していくうえでの採算に大きな課題があると林野庁はみているのです。

 竹林の管理は、竹を利用していくことが大きな課題になっているというのです。竹は身近で、軽くて加工性のある素材です。古来から竹が農業や漁業の身近な素材として利用されてきたのは、そのためです。竹製のザル、竹製のカゴ、背負いカゴ、竹製のほうきや熊手、のり養殖用の浮き竹、釣り道具、灯籠、物干し竿など。

 古来から家屋の土塀の下地、外装剤、内装材などの建築材など。現代は、ビルを建てるうえでの足場などがベトナムなどの東南アジアで利用されています。ビルのなかでの暮らしで緑を取り戻すためにビルの庭園としての竹の利用もあるのです。

 現代で、日常における暮らしの製品はブラスチックなどに置き換わり、建築材は合板やセメントなどの工業製品になっているのです。大量生産できて、安くて気軽な便利な素材に変わったのです。ここでは個性をもった芸術性が消えて、職人的な熟練労働も失われていった。

 文化的には、尺八、笛などの音楽楽器、生け花用具、茶道具、庭園、弓などに利用され、様々な伝統工芸品として利用されてきました。現在でも、伝統工芸品としての素材開発が模索されています。さらに、竹炭は湿度を調整することや消臭機能として利用されたりしています。竹酢液は害虫逃避効果などにも使われています。

 近年では、科学技術の最先端を利用した竹材をパルプとして利用することで、用途を広げていこうとしています。竹の繊維を利用しての自動車の内装やヘッドライトカバー、フロントグリルなどの新素材開発が行われいるのです。竹の利用がセルロースナノファイバーによっての期待も高まるところです。

 また、竹の抽出液を利用しての抗菌、抗ウイルスの開発も行われています。竹炭を粉状にしてパウダウとして土壌改良材に利用、竹のエネルギー利用の開発などがすすめられているのです。竹の性質を利用しての様々な研究・技術開発の期待が大きくなっているのです。

 

 3,竹の民俗誌と文化

 

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 日本文化の深層を探るということから沖浦和光氏は岩波新書で、竹の民俗誌をだしています。この本から竹のもつ歴史文化的側面を深めてみたいと思うのです。

 縄文時代から竹は暮らしのなかで利用され、弥生時代になるとかごやザルとして利用され、櫛や竹玉などの装飾品として利用されていたとするのです。まさに、古来から生活用具として、また神秘的な呪術の道具に竹の利用があったとみるのです。お祝い、祭りには舞踏や歌がつきものですが、竹笛や竹の打楽器、竹管楽器などが使われたのです。

 建築や土木にも竹は大いに役にたった。軽くてバネがあり、使い勝手のよい材料であった。土器や鉄器が入らない地域では竹は役にたった。水筒などがよい例であります。

 日本の中世から近世にかけて、竹の文化は大きな変遷があなりました。古代から中世は南九州が中心であったが、近世に竹の利用が全国的に拡がったのです。

 竹のふるさとは照葉樹林文化と南太平洋であると沖浦氏はのべます。中国の竹林文化は長江の流域、江南地方の南部から雲南地方です。竹には温帯系と熱帯系があります。熱帯系は地下系で繁殖せずに密集する性質をもっていますので、竹の生態系は温帯系と異なるのです。

 東南アジアで、竹は手軽に利用され、日本のように精緻に職人的な利用はなかった。竹からみると日本文化の原郷は隼人文化にあると沖原氏は考えるのです。隼人は南方の海流民族とするのです。

 ところで、ベトナム北部のナムディンでは竹の工芸村があります。竹を素材に、3ケ月間、水につけてそして、天日で乾かして、丈夫な竹素材にして、さまざまな工芸の材料として利用しているのです。花瓶の代わりに竹からの竹を利用した花をいけるつぼを作っているのです。ヨーロッパへの工芸輸出品として生産されているのです。また、この材質から蛍光灯のかさをつくったり、部屋のインテリア製品としての工芸品になっているのです。

 神田嘉延のブログ(ベトナム歴史文化の旅・竹からつく花器、食器照明笠を参照)

 

4,現代の竹からの学び

 

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 アジアの多くの温帯、熱帯の地域で、竹は古来から人々の生活の大切なさまざまな道具の材料として使われてきたことを現代人は積極的に見直す学びからはじめることだと思います。竹は人々の身近な生活必需の材料であったからです。

 竹によって、地域の暮らしの循環型が身近につくられていたのです。それがプラスチックなどの安価で便利な素材の出現によって極端に減少したのです。それは農山村の過疎化も大きいのです。竹が利用されなくなったことによって、竹のもつ成長性が森林の破壊、農地の侵食による荒廃という公害にもなっていくのでした。

 竹には、食材、建築・工業製品の材質、消臭や農薬効果、堆肥・土壌改効果、芸術文化性、教育力などの多様な価値があるということの再発見の学びが必要なのです。それを現代の暮らしからも見直すことなのです。

 暮らしから長い歴史をもつ竹を積極的に見直すことは急務になっているのです。単に見直すだけではなく、現代的な科学・技術を利用しての製品開発が求められるのです。また、竹のもつ文化性を高めて、芸術性をもたせ、市場でも大きく評価されていくという職人的な熟練の養成も大きな課題となっているのです。

 この学びをどのようにしていくかということがなければ竹の価値を再生していくことは難しいのです。