社会教育評論

人間の尊厳、自由、民主的社会主義と共生・循環性を求める社会教育評論です。

リーダー・幹部を育てること

リーダー・幹部を育てること

 

 本記事は、10年前以上の稲盛アカデミーで、社会人向けの経営哲学の一環として、講義をしたときのレジュメの内容です。今後の企業ばかりではなく、地域、組織などのリーダー養成で参考になればと思い、再録します。

 講義は、中小企業経営者向けの講義でしたが、地域や組織のリーダー養成ということも射程に入れて、書き換えているところもあります。

 鹿児島大学は、社会人が学べるように積極的に大学の授業を直接受けられるように教養科目を中心として、公開してきました。また、社会人や地域に公開できる講座を提供してきました。

  鹿児島大学稲盛アカデミーは、教養科目を提供し、特別に社会人専用の講座を開講してきました。このリーダーを育てることの講座は、社会人を対象にしての公開講座です。

 

 会社の成長と経営幹部(地域や組織も含めて)

  • 会社(協同組合、地域組織)が成長していくと、規模が大きくなり、組織も複雑になり、一人でみていくことができない。これはどんな組織にも言えることです。
  • 経営責任を担ってくれる幹部は不可欠です。どの会社(組織)でも優れた人材ははじめからいるわけではない。幹部は、会社(組織)の成長と共に育てていかねばならない。
  • 会社(企業)は、市場関係での営利組織で、協同組合のように市場に対応するけれども非営利組織と本質的に異なる組織です。また、会社は、営利組織として、社会的貢献をしていくが、公的な国家や市町村自治体のように、税金によっての経済的基盤をもって、公的な役割を果たす組織ではないのです。
  • むしろ、国家や地方自治体に税を納めて、社会的貢献をしていくのです。市場にもかかわらず、国家や地方自治体のように権力機関の公的役割とは、全く異なる市民が主体的につくり、参加していく非営利のNPO法人法人や公益財団や社団法人などがあります。社会には、それぞれ、役割の異なる組織があることを認識しておくことが必要です。

 

場・機会を与えて鍛える

  • 活躍の場を与えることで経営者意識を持つ幹部を育てる必要があります。
  • アメーバー経営の小集団は、リーダーとしての育てる大きな役割を果たした。リーダーとしての能力が磨かれ、成長していく。任せっぱなしにしないこと。会社以上に、公的な組織の場合は、分業化によって、仕事がこまかく細分化して、業務遂行的に任せるだけの一面が強くでるのです。組織の経営としての意識が大きく薄れていくのです。
  • どんな組織でもリーダーを育てていくには、深い愛情をもって厳しく指導することが求められます。

会社や地域・組織を大きく伸ばすカギ

  • リーダー・幹部となる人材を育成できるかどうか。これは、組織が発展していくうえでの不可欠の要素です。それが、できない会社は、発展が阻害され、公的な組織は、官僚化が進み、公的な目的から大きく離れていくのです。
  • 業務遂行的な能力や管理能力だけではなく、リーダーの人間的成長を促していくことも大切です。

経営問答・質問

  • 会社が拡大するとき、古参社員の処遇をどうするか。地域であれば古くから活躍してきたが、今の時代とのずれの意識があります。組織の目的からも、現実からも離れがちになっている場合があります。人間はどんな経験をもっていても常に学び、成長が要求されるのです。
  • 熱心であるが、古参社員にリーダーシップがない場合があります。

会社成長期の悩み

  • 個々の能力には差があるのが現実です。創業時のときの社員の意識と社長の理想・理念との意識の差。
  • それぞれの器や個性があるのです。これを決して否定して一律的に価値判断して、それぞれの持っている能力差や個性、性格の多様性をみていくことです。

経営を管理するしくみをつくる

  • 管理項目を全部洗い出し、文書化で確認していく。それぞれぞれの組織の目的・目標の管理項目を全部洗い直す。これらも文書化する。
  • 損益計算書の管理項目を全部書き出し、売り上げがこのぐらいであれば、仕入れ、原料の代金、人件費はこれだけ、光熱費はこれだけ、その範囲でやれば利益がでる計算を。組織であれば、目的・目標の達成を数値して、どうすれば達成できるのかのかを、目的・目標の合理的な達成方法の過程を具体的に計画化できるように。
  • 採算をだすためには、どうすればいいかの管理するしくみをつくり。地域組織の場合は、目的・目標の達成の管理のしくみを過程を常に示して、点検して、状況に適応しなければ、組み変えていく柔軟性をもつことも大切です。

 

副官は人間性をみて選ぶ

  • 優秀な人を採用したいと思い、それには大学を卒業した人がいいだろうと、そういう人を雇う。そういう人に限ってだいたい1年たたずにやめてしまう場合もあります。
  • いままでの社員は学もなかったけれども、真面目で経営者のいうことをよく聞いてくれたので雰囲気をよかった。大卒の新人は不平不満を鳴らして会社の雰囲気まで壊して辞めていくこともあるのです。

どんなに賢い人を雇うにしても人間性ある人を

  • 絶対に能力だけで採用してはならない。優秀な専門家が喉から手がでるほどほしいと思っても、人間性が伴っていない人は雇ってはならないというのが稲盛人間経営の特徴です。
  • 稲盛さんは、鹿児島で生まれ育ち、西郷隆盛敬天愛人隠れ念仏の精神や郷中教育の影響を強く受けてきた人です。仏教的な利他の精神と郷中教育の倫理を強くもった人です。郷中教育では、偽りを言わず、弱いものをいじめず、身に私を構えずという利己主義に打ち勝つ心、利他や公共の精神を常に醸成したのです。
  • 利他の心をもって、礼儀正しく上にへつらわず、下のものを侮らず、悪口をたしなみ、人の艱難という困難にあって苦しんでいる人を、見捨てないということです。そして、温和慈愛にして、物の哀れを知り、人に情けあるをという利他の精神、公共の精神を大切にしてきたのです。
  • 経済活動そのもは、利他精神と公共的な活動です。利益も公共的な市場活動をとおしておこなわれるものです。そこに、嘘や偽り、人を騙したり、弱いものいじめがあってはならないのです。公正なる市場活動をとおして、人々が幸福に、楽しく豊かに生きられることが大切なのです。

器に応じて仕事を任せる

  • 稲盛和夫さんはのべます。京セラを作る前の会社で研究していたとき、高卒で助手をしてくれた人は、わたしと同じように努力して伸びて、京セラの会長を務められるようになりました。みんながかれのようになったわけではない。それぞれの器があるのです。
  • 能力はそれほどでもなく、人間性がよくて長年一生懸命やっておられる人は、情けを持って仕事をお願いしなければならない。あくまでもその人にあった仕事をさせように心がける必要があります。

新入りが上役になることがある

  • 古くからいた人は中途入社した人が自分より上の地位にいきなりつくと、社内でもめ事の種になります。
  • 新しい事業をしていかねばならないということでは、十分に理解してもらうように説得しておくことが必要です。

質問・能力に一長一短ある
幹部の育成

  • 発電所の改装工事やメンテナンスの24名社員の提案型エンジニアリングセールス
  • 社員にはすべての工程に精通してほしい
  • (改善提案、提案資料、営業、受注、設計、外注業者手配、施工、工事管理など)

事業部の人柄

  • 非常な努力家で提案能力に長け、事業部に確実な利益をもたらす人であるが、無愛想でお客様に人望がない。
  • どちらかと職人タイプでクリエテイブなことに消極的でリーダーシップをとれない人。
  • 対外的に評判がよいが技術屋として能力が低いため仕事を任せられない人
  • 若手は優秀であるが経験が浅いため、エンジニアリング的発想が不十分

答え・会社を機能的に分け、それぞれに向いた幹部に任せよ

  • 三つの機能に分け、その機能に適した人にまかせよ。
  • 改善提案
  • 営業センスはないが設計と外注業者の手配と施工管理
  • 営業担当

スペシャリストを育て

  • それぞれの人をその道の専門家に育てる
  • 守備範囲をひろげていく

全体を見通させ推進のリーダーになれる事業部長を育てる

 

質問・社員の経営マインドを高めるには

  • 労働集約型産業場合。各種研修・勉強会に社員を参加させ、情報の共有。休日に実施せざるをえない。指名研修
  • 積極的に研修のものと傍観者になりがちのタイプに分かれる。

 答え・トップが幹部を大事にすることから始めよ

  • 自己犠牲は要求できない。家庭を犠牲にしてまでも働けということはいえない。タイプを二つにわける質問者は少し方向がまちがっておられると思うと稲盛和夫さん。
  • 会社は何のためにあるのか
  • 経営者の財産を守るために、家庭を犠牲にしてまでも働けと、一方的な都合を言って社員が働くわけがありません。
  • むこうに犠牲を求めるのではなく、社長自身が社員を大事にしてあげる。待遇をよくして誇りをもてるようにしてあげる。
  • 社員のプロ意識に訴える
  • お客様に愛される会社として、責任感ある行動を幹部の人たちがしてくれるような教育を社内で。家庭を若干犠牲にしてでも働いてくれる忠誠心をもった人間がほしいと思われるのも無理もない。
  •  
  • 質問・責任ある幹部を育成するにはどうしたら。
  • 質問者・(父が創業した会社でわたしが副社長、兄が社長、弟が経理担当)
  • ワンマン経営で組織力は弱く、優秀な人材が定着しなかった。ヒット商品の連発で業界をリードしてきたが、営業力や組織力が不備で後発メーカーに逆転。
  • 二年前に全社員にフィロソフィ手帳を配布。業績が伸び悩むことが続く。部長以下の社員に主体性がなく、指示待ちで任せることを心がけるが、ほっておけず口をだしてしまう。組織を刷新する課題がある。
  • 稲盛さんの答え・フィロソフィを説くと同時に、現場で厳しく鍛える。
  • フィロソフィは共同経営者をつくるためのもの
  • 会社が大きくなるにつれて一人で経営をすることができなくなる。信頼できる部下を育てて共同経営者にしていく。
  • フィロソフィを頭ではなく、自分の行動に生かせるための人材育成。採算に責任をもってもらう独立採算での役割分担。

部門長には責任をもって採算をつくれる人を任命する

  • 部門長は社長と同じ・責任感をもってもらう。
  • 責任者はただ部門の社員をまとめていけばいいというのでない。材料の仕入れから完成品までの経費、売り上げ、利益まで全部みられる責任者である。
  •  
  • それぞれの社員がもっている特性を理解する。
  • パート・アルバイトに至るまでわかるような利益を生む仕組みづくり。
  • パートの主婦は経済感覚が鋭い。経営の原点であるフィロソフィを教えてあげる。
  • 会社は、城にたとえると石垣。大きな石もあれば小さな石もある。スマートできれいな石だけを並べてみても風雪に耐えれない。
  • 小さな石が間につまっているから石垣がガッチリくまれていく。パートの方がどんどん提案してくれるような職場づくりが大切です。
  •  
  • 任せるのではなく、責任をもたせる
  • 任せっぱなしではなく、結果を厳しく愛情をもって、点検する必要があります。それが、社長の仕事です。まかせた以上は信頼しなければいけませんということで点検をしないことを合理化するコンサルタントの意見は、実際に仕事をしたことのない人のいうことだと稲盛さんは言うのです。
  • 厳しき点検するといことは、点検される人にとっても自己の責任を完全に果たすために、大切なことです。点検あってこそ、見落としや、自分の足りないことを発見することなので、点検されることによって、責任の完全な保障と自己の人間的な成長にとっての飛躍にもなっていくのです。
  • そこには、お互いの点検に対する了解、人間的な信頼が大切なのです。点検されることに対しての感謝の気持ちを湧いてくるような関係が大切なのです。決して、上からの目線で、管理主義的な非人間的な相手をせめる点検であってはならないのです。

自らを高める

尊敬されるリーダーとなる

  • 従業員を惚れさせることができるか
  • 従業員がついてこなければ事業は成功しない。
  • 中小企業にとっては、いかに従業員の力を結集させるかが事業成功の鍵となる。持てる資源は人しかいない。従業員の力を最大限に引き出し、事業を成功。そのためには、リーダーがなによりも仕事の面でも、人間性の面でも信頼され、尊敬させること。
  •  
  • 先人の教えに学ぶ
  • 稲盛和夫さんは格言の引用での話ではなく、哲学や宗教などを一生懸命学び、人間のあるべき姿を探求し、心を高めていく。寝る前にどんなに忙しくとも、哲学書、古典などを一ページでも2ページでも読んできた。

「無私」の心のリーダーシップ

  • 会社がうまくいきだすと傲慢になってしまう経営者や、役職が上がるにつれ、威張るようなリーダーでは、社員の心は離れていく。
  • 地位や名誉、金といった利己の欲望を抑え、集団のために謙虚な姿勢で尽くす。

質問・トップとしての価値判断の基準をどう確立するか

  • 創業50年の菓子メーカーで社員数500名、年商90億三代目の社長で父が会長
  • 4つの方針
  • 1,大量生産から多様化したニーズに対応
  • 2,仕事をつうじて心を高められるような職場
  • で、社員の幸せをどのように実現するか
  • 3,部門別管理の細分化とスピード化。
  • 4,米菓をいかに世界に広げられるか。

稲盛さんの答え・先人の教えを学びトップとしての人格を磨け

  • お父さんの時代から会社にはあなたよりも年をとった人がたくさんいると思いますが、問題なく息子のあなたが社長になれたのは、お父さんを尊敬し、信頼しておられるから、世襲で跡を継ぐことに抵抗がなかったのだ。

判断の座標軸は人間性

  • 判断基準というのは人格の投影である。
  • 見栄っ張りの人は見栄の方向へ、恐がりだと、恐がりの方向へ、石橋を叩いても渡らぬ慎重な人は、石橋を叩かず。価値判断は、その人の人柄。

人格を高める二つの方法

  • 先人の教えに学ぶ。
  • 利他の行為。

社長が会社に命を吹き込む

  • 雇われ根性の人ばかりが集まっていると組織の精気が低下していく。企業としての生命力を注入することがトップのつとめ。

  • 質問・トップは第一線にでるべきか
  • (医療機器、材料の販売。先代社長急死で29で才社長に。地域のナンバーツーの会社。二年前営業部長が病気をしてから、社長であるわたしが営業の最前線にでるようになった。)
  •  社長がほとんど会社にいない。営業の前線にでていては人が育ちませんよといわれる。
  • 稲盛さんの答え・率先垂範(自から率先して、行動し、他の模範となる)のトップのもとでこそ人は育つ
  • あなたがなんでやるから、人が育たないという声に気にする必要なし。
  • 社長がバリバリ仕事をして、われに続けと号令をかける。
  • 率先は「史記」、垂範は宋書」に出てくる言葉。共に、紀元前の古代中国
  • の歴史書を語源とする。「率先」は”先んじる、人の先頭に立つ”という意味。「垂範」は”模範を示す”という意味がある。
  • 値決めは経営なり
  • 医者を相手に販売するわけですから、話題といい、礼儀作法といい高いレベルが要求される。
  • 社長自身が営業を先頭切ってやる、社長自身が直接に教えなくてはならない。
  •  
  • 質問・トップの意志を社員に浸透させるには
  • (明治19年創業の印刷会社。社員はパートを含めて70名。)
  • 社員から信頼されていると思っていたが、最近社外から社員にあなたは不信感をもたれていると言われる。よく考えてみれば、部下への意志伝達がうまくいっていない。
  • 稲盛さんの答え先頭に立って働き酒を酌み交わしながら語り合え
  • 自分たちのためにトップが苦労しているのは、社員に共感を得る。率先垂範で、トップ一番苦労しなければならない。
  •  コンパは心を通わせる。最高の方法。こちらの気配りが足りないことや
  • 逆恨みしている本音がわかる
  • セミナーでぶつけられた不信感
  • あなたは冷たい人間といわれたこと
  • われわれは金のために働いているのに、心を高めるは嫌いだという米国の幹部連中。赤字だった会社を黒字にした経営者をあなたはしかったではないか。
  • 愛とか思いやりと言っているが、冷たい人間ではないか。
  • 正々堂々と反論する
  • なぜ冷たくしたのか。少しの黒字でほめられるのか。いままで累積の赤字は相当なものだ。
  • ほめたら喜ぶかもしれないが、それで満足してしまう。翌年、がんばってさらに利益をだしてきた。今では正常な利益がでるようになったので、彼を褒めた。大膳は非情に似たり
  • 信頼できる信用してもらえる人々ををつくれば儲かる
  • 思いを伝えていくには、うちの社長は立派であると社員から思われる人間性が必要。商売は信用が第1、商売はお客様から尊敬されることが大切。儲けるということは、人間性といろいろなことを備えていることになる。
  • 大きな視野をもって、本当に安定的に会社が継続して、大きくなっていくことが、社員の幸福、豊かさを保障していくという稲盛さんの見方です。一時的な小さな成果も大切ですが、もっと心を大きくしてみることが大切ということで、累積の赤字に目を向けさせることに厳しいを注いでいるというのです。
  • もちろん、累積した大きな赤字は簡単に消えていくものではなく、長期に段階的に解消していくことや飛躍の仕事も必要です。ときどきに、累積した赤字は、重い荷物になっているので、常に励ましながら元気づけて、やる気をおこしていくための激励、誉め言葉も必要なときもあります。
  •  
  • 質問・社内最年少の社長がいかにしてリーダーの役目を果たすか
  • 父の他界により、25才で社長に。300年前創業。乾物商の8代目
  • 6億の売り上げ、社員12名でパート17名。できる範囲で少しでも自分の思いを社員に知ってもらおうと「社長通信」を給料のときに。
  • 謙虚に学びつつ毅然としてルールを貫きビジョンを掲げて率いていく
  • 仕事や社会経験がないので、社員を師として仕事を学び、短期間にマスターしていくことがポイント。
  • 部長2名を取締役の経営陣にしたことは賢明の決断で、社員の人たちの信頼にとって大切なこと。
  •  

 

 

 

 

 

 

  •