社会教育評論

人間の尊厳、自由、民主的社会主義と共生・循環性を求める社会教育評論です。

霧島山麓の歴史文化からSDGsを

f:id:yoshinobu44:20190802141228j:plain
霧島山麓の歴史文化からSDGs

   神田 嘉延

 地域の歴史文化からSDGsをみる意義

 2015年に国連は、持続可能な開発目標(SDGs)を採択した。この国連の採択によって、各国政府、地方自治体、企業、非政府組織、教育機関などが、17の持続可能な開発目標にとりくみはじめています。

 17の持続可能な開発目標は、個々の目標にそって単独に考えるのではなく、総合的にみていくことが大切です。同時に様々な側面からの地域での生活や経済活動でみていくことが求められています。その際に、地域の自然地形や歴史文化からの継続性から未来への持続可能な地域社会の構築が重要になってくるのです。
 
現代の水をめぐる問題状況とSDGs

 異常気象によって、日本は水害に会う機会が増える今日です。現代は、干ばつと水害が世界各地で起きています。日本で暮らす人々にとって、地球上は、水が豊富であるように思われます。しかし、地球上で人間が生きるために利用できる淡水はわずかなのです。21世紀は、水の危機といわれるように世界の各地で、水をめぐる紛争がほっとおけば激増します。
 水をめぐる紛争は、格差・貧困と差別の問題がよこたわっています。水の危機の対応には、環境問題ばかりではなく、発展途上国の貧困問題、女性、子ども、高齢者の社会的弱者に配慮しての持続可能な開発目標(SDGs)が求められているのです。

f:id:yoshinobu44:20200219151317j:plain

 SDGsから霧島の自然と歴史文化の特徴

 

 霧島山麓の自然地形と歴史文化の特性から未来への持続可能な開発目標をつくっていくことが求められているのです。

 霧島の自然地形は、古期から新期にかけて幾重の火山活動で20あまりの火山体があって、多くの火山湖があるのです。そして、水が地下深く山の下に滞留しているのが特徴です。

 豊富な水の存在は、縄文晩期からの水田開発が都城で発見されています。霧島山麓は、天孫降臨の神話があるように、文明の発生が早くから行われていたのです。そして、潅漑用水事業によって、多くの水田が開発されています。江戸時代に開発された潅漑用水事業は現代でも利用されているのです。


 ここには、ミネラルの豊富な淡水があります。霧島の天然水は、炭素イオン、マグネシウムを含む豊富な水、体を構成するマルチプレイヤーシリカ水を含むものです。

 温泉の多いのも自然地形の特徴で、独特の風景と共に心の癒やしの場にもなっているのです。溶岩凝結岩が河の浸食によって、滝になったり、甌穴になったり、また、豊富なわき水も各地にあり、自然の芸術品がつくりだされているのです。
 霧島山の深部にエネルギーが蓄積しております。明治から水力発電所が各地につくられ、近年になって、地熱発電所がつくられているのです。
 

f:id:yoshinobu44:20200219151409j:plain
 

 SDGsから霧島山麓での水とエネルギー

 

 300年以上継続して、維持されている潅漑用水路が小水路発電に利用できる技術開発が行われ、その導入経費の安価化も工夫されている時代です。水力を利用して、複合的に太陽光、バイオマス発電、蓄電装置、地域の送電線網など、地域でネルギーがまかなえるスマートコミュニティづくりの時代も到来しているのです。この未来へのエネルギーの地産地消のしくみづくりに、300年以上も継続している潅漑用水事業の過去の歴史から学ぶ意味は大きなものがあるのです。


 日本は水田の稲作によって、農村では、潅漑用水路が各地につくられています。潅漑用水の開発には、多くの地域の人々が動員され、その後の維持のために、地域の共同体の力が大きな力をもったのです。現在でも土地改良区、水利組合としての地域の共同事業が継続しているのです。
 継続的に豊かな水が供給していくたには、水源の確保として、森林の役割が大きなものがあります。法律によっても水源としての森林の役割を明確に位置づけられているのです。入会権、地域の共有林は大きな意味を歴史的にもってきたのです。

 

 日本の自然地形から水力発電所が大きな意味をもっています。水力発電所は日本を救うといわれるほどです。自然とのつきあいをうまくやっていかねば、自然からしっぺ返しされるのです。これが日本の厳しい自然条件です。うまくつきあえば日本はすばらしい自然の恩恵があるのです。自然と上手に共生していく水力発電所はその典型です。
 例えば、天孫降臨の神話がある南九州の霧島はカルデラ地形から急に流れ落ちる河川の傾斜地域が多いのです。この地形を利用して、明治後期から大正期にかけて水力発電所が積極的に作られたのです。水力発電所は、地産地消費のエネルギー開発として、今後に重要性を増していきます。
 

 個々の家族農業と集落の共同体、森林の共同管理の意味があるのです。この意味で、過疎化が進む中で、その機能を維持することが難しくなっている状況で、新たに地域の小農・森林を維持するための社会的組織が必要なのです。協同組合、ワーカーズコープ、NGONPOなどの新たな動きも生まれています。

 また、積極的に新たな市場を開発していく社会的課題に取り組んでいく企業の役割もあります。森林・竹林を自然循環させるための有効な管理のため、また、複合的な農業経営のために、バイオマス発電の積極的な利用も可能になっています。地産地消のエネルギーということから、今まで捨てられていた農産物残渣を資源として、農家が個別に有効に利用できる小規模なバイオマス発電プラントの導入も必要なことです。

f:id:yoshinobu44:20200219151446j:plain

 霧島山麓地域での300年以上続く開墾用水事業

 

 松永地区には灌漑用水を守るために、災害防御用の石橋アーチがかかっています。そこでは、河川水を落とす段差工事がされています。この石橋アーチのスパンは3.5メートルで、橋の長さは13.3メートルです。1777年の改造の碑銘があります。近世時代の貴重な災害防御用の石橋アーチです。水を分散させて水害から灌漑用水路を守ろうとしたのです。
 ところで、霧島山麓水系は積極的に開墾が行われました。鎖国令の後に、広瀬川は川筋の大工事を4年間で行います。1666年に完成し、新たな新川をつくり、川筋が5000石高の新田になったのです。川筋の開墾は自然の復元力によって、大雨が降れば水があふれやすい地形です。現代でも水害の防災対策として、歴史的地形を知ることは大切です。


  国分平野の天降川の川筋直しの完成によって、河川の氾濫をなくし、新たに400ヘクタールの水田をつくったのです。この水田整備の完成は、1716年です。約50年かけて、河底の整備、排水路の整備、新田開発をしました。
 国分平野の用水路の整備は、小村新田・1851年120ヘクタール、松永用水・1671年396ヘクタール、平溝(清水新田)・1672年143ヘクタール、宮内原用水・1716年317ヘクタール、重久中台用水・江戸後期76ヘクタール、五ケ村井堰1672年350ヘクタールがあります。

f:id:yoshinobu44:20200219182359j:plain

霧島市教育委員会主催「天降川川筋直しと宮内原用水」企画展パンフより


 用水整備事業には多大な経費と尽力を要して、自然地形から極めて複雑な難工事であったのです。宮内原用水は取水口から12キロに及ぶものですが、高低差は、17メートルということで、極めて平坦な勾配で、100メートルで5センチという測量技術の正確さを要求されると同時に、嘉例川と西光寺川を横断する工事でした。また、取水口は大きな岩が多く、山地をぬけるということで、隧道工事を強いられました。そして、暗渠、放水門などの設備が必要な難工事でした。


 その潅漑面積は、436ヘクタール(現在は344ヘクタール)です。隧道は、上から何カ所も井戸を掘って、井戸の底部を横に掘って、つなぎ地下トンネルをとおしていったということです。そのトンネルを大きくするために取水口近辺の本流の天降川をせき止めて、上流から水を流して、土砂を水力によって崩していく方法をとったのです。
 

 嘉例川を宮内原水路が横切るために、潜り工法がとられています。合流点からおよそ30メートル奥まったところに隧道を掘って潜らせています。そして、川のこの付近の高低差は岩石の落下が頻繁に起きる地域ですので、嘉例川の底部を石組みで補強する工事をしているのです。西光寺川でも宮内原用水路を横切らせるために同様な工事をしています。
 国分平野には武士の麓集落と郷村制が国分郷、清水郷、重久郷、日当山郷村と存在した。これらの郷村が統一して国分平野の用水路と開田をして、産業の発展と治水事業をしてきたのです。山の整備も薩摩藩の林野やそれぞれの村の林野を整備して森林の管理と治水事業を結びつけることから植林の奨励もしたのです。
 

 現代的にも300年前の事業は、地域社会の循環機能として機能しているのです。SDGsを考えていくうえで、この300年以上続いている潅漑用水を積極的に評価していくことが大切です。この用水事業は、持続性、防災機能を充実していくうえで大切な見方を提供してくれます。

 

f:id:yoshinobu44:20200219152327j:plain

 

 SDGsから霧島山麓での新たな水力発電

 

 重久発電所は2015年2月より売電を開始しています。出力980kwで一般家庭1500世帯にあたります。小水力発電所が新たに注目されているなかでの現代的創設の水力発電所です。
 110メートルの落差を利用しての発電で、1年半の工事で完成しています。小水力発電を推進する九州発電株式会社がつくったものです。
 この地域は県道が走り霧島神宮方面や都城に行く大切なところですが、水力発電所が防災対策機能も含めて注目されるところです。発電所の途中の県道に水害を忘れないようにという掲示板があります。発電所ができたことによって日常的地域の環境点検も行われています。


 霧島市霧島田口の神話の里公園の下にむかしからの田口土地改良区の用水路がありました。この用水路は地域の人々の祖先が苦労して田んぼの開墾のためにつくったものです。そこに平成30年小水路発電所をつくりました。最大出力39キロワット、年間30万キロワット時で全量を売電して、年間1000万円の収入を得ています。misumi株式会社が運営しています。

 完全従属型発電で全量を用水路を管理してきた土地改良区組合に戻しています。まさに、昔からの田んぼの用水路を利用しての自然環境にやさしい発電方式です。
 売上の5%は土地改良区に還元されています。水利施設の維持や賦課金低減にあてられています。田口用水路は取水口から末端の田んぼまで標高差は200メートルあります。64ヘクタールの田んぼです。
 高密度ポリエチレン管やコンテナ型ユニットを利用して土木工事などを大幅に短縮しています。約3カ月です。水圧管路210メートルで有効落差25メートルを利用して発電しています。

f:id:yoshinobu44:20200219152353j:plain

 

 霧島山麓でも焼酎粕からバイオマス発電

 霧島山麓の都城には霧島酒造という日本一の生産量をもつ焼酎メーカーがあります。霧島の天然水を地下100メートル掘って霧島烈か水という火山灰土壌での岩石にたまったミネラル豊富でまろやかな水をくみ上げて焼酎にしているのです。
 ここでは、焼酎粕を発酵させてメタンガスをつくり、44%は焼酎製造工程のボイラー用燃料にしています。56%はバイオマス発電に利用しているのです。2018年6月現在で850万kwh/年発電量で2000世帯以上の電力を売電しているのです。発酵させてメタンガスを抽出したサツマイモの焼酎粕は堆肥として利用できるようにして、各農家に戻しているのです。地域での循環システムをつくりあげています。


 鹿児島や宮崎は焼酎製造会社が各地にあります。サツマイモの生産地でもあります。各焼酎製造メーカーが霧島酒造のように焼酎粕を発酵させてメタンガスをとるようにしていくには、どのような課題があるのか資金面や財政的な補助、新たな地域電力市場の創出、その経営運営の住民参加までも含めて検討していく課題があるのです。地域での再生可能エネルギーの可能性としてみていくことが求められると思います。

 

 家畜糞用尿からバイオマス発電


 隣接し霧島市での高千穂牧場のように家畜の糞尿を利用したバイオマス発電もあります。南九州は畜産地域でもありますので、その地域循環型の発電の可能性は大いにあるのです。農業や農産物加工での地域での再生可能エネルギーの可能性は高いのです。
 霧島市の高千穂牧場は観光地として日曜日や祭日には家族連れで大勢の人が訪れます。動物とふれあう場でもあり、子どもたちが羊とたわむれ、牛の乳しぼりも人気があります。
 ここでは家畜牛の糞尿を発酵させ、そのメタンガスを利用して、バイオマス発電をしています。温室効果ガス減少にも貢献します。そして、堆肥として牧草地に戻しています。未来への循環型の持続可能性をもった環境にやさしい観光酪農を展開しているのです。

 

f:id:yoshinobu44:20200219152843j:plain

 

SDGsから大義による企業経営のあり方

 

 市場経済のなかでの企業の継続的な存在は、市場競争に打ち勝つことが求められます。企業は、常に市場との関係で社会的ニーズに対応しなければならない。そして、企業が生きていけるのには、社会のニーズの変化によって、企業の変革が必要になってくるのです。

 イノベーションマネジーメントは、企業の戦略にとって不可欠なのです。社会的なニーズは多様です。そこには、社会的大義に反することもあります。経済的な価値と大義の社会的な価値は、短期の利益のことからは一致しないこともあるのです。社会的な大義、社会の進歩を長期にみていくことは、長期的に継続的に企業が存続して、発展していくために不可欠なことです。

 

 企業は、何をめざして変革していくのか。企業本来の目的は、単なる目先の利益ではなく、長期的に共通価値の創造ということで、経済的価値と同時に未来への社会的価値を創出し、企業と地域社会が共同で価値を創造する経営戦略が問われる時代です。(経営学者のマイケル・ポーターより)
 持続可能の地域社会の大義のもとに賛同した多くの環境NGO環境保護を推進する行政、市民の後押しに受けてのビジネス市場を拡大していく時代です。

 企業は損益計算や現金収支、連結決算などの経営成果をはかるモノサシに社会的価値を導入していくことが必要な時代としているのです。経済のエゴシステムからエドシステムの時代で、市場創造・拡大に社会的課題としての経営戦略が求められるのです。社会的課題として、10年単位の長期計画と短期の計画という2つのレンズからの経営のサイクルが必要とするのです。

 企業は会社全体で考えの共有をはかり、取り組みの意志決定を社員全体のものにするために話し合いは重要なことです。PDCAという経営サイクルのなかでSDGsの視点と結びつけていくことです。PLANのなかでもSDGsとの関係で、取り組みの行動計画を作成し、会社内での理解と協力が不可欠です。DOということでもSDGsの視点を加味して取り組みを実施し、結果を評価していくことです。

 取り組みの状況の確認と評価というCHECKは、取り組みの記録から結果を評価して、レポート作成をしていくことです。そして、取り組みの見直しというACTでは一定の取り組みを整理し、外部への発信し、次への取り組みを展開していくことです。これらのPDCAというサイクルのなかを短期のことはもちろんのこと、長期的な視点からも捉えていくことがSDGsという視点から求められるのです。

 経営には1年という短期のサイクルは、否定するんものではありません。具体的に損益計算をしていくのも短期の計画がなければなりたっていきません。この短期の経営計画に、長期的な計画のなかで位置づけしていくことが必要なのです。

 経営を社会的な大義という側面は、長期的計画があってこそ意味をもってくるのです。長期計画を短期のなかに押し込んでいくことが必要なのです。SDGしは極めて長期的な経営目標のなかで位置づけられていくのです。短期計画という時間的に狭い範囲では、難しいのです。


 企業は、SDGsの主体になるのです。多くの企業がSDGsのスローガンをあげはじめていることは重要なことです。企業のあり方も大きく変化していく時代です。働く人々と経営者が協働の力で、SDGsをもとに未来社会を模索していく時期です。この際に考えるべきことは、働く人々が意欲をもって人間らしく活躍できるように経営の参加民主主義を充実させるためであり、そのための教育や研修に力を入れていくことです。

 

 現代は、SDGsから経済成長のあり方が問われるのです。GDPの再検討が求められているのです。豊かさや社会進歩は、よりよい暮らしを指標にしていくことが求められているのです。それは、住宅、収入、雇用、コミュニティ、教育、環境、健康、人生の満足度、安全、ワークライフバランスなどBetter Life IndexということをOECDは求めているのです。

 貧困を生まず、格差を広げないように、資源の枯渇や自然破壊ではなく、人間らしさを大切にする労働、持続可能性の地域社会をつくっていくことです。国連が提唱する社会開発や人間開発の指標が大切になっているのです。
 

 新たな経済成長の定義のための指標と地域SDGs経営

 

 SDGsは、ベーシックなヒューマンニーズである貧困や飢餓の克服、健康と福祉、教育、ジェンダー平等、安全な水とトイレなどが土台としてあります。達成のための前提条件に、平和とあらゆる人々の社会的参加、司法のアクセス、あらゆるレベルの説明責任が求められているのです。

 そして、グローバル・パートナーシップの活性化としています。 さらに、持続可能な経済として6つの開発目標をあげ、財政、社会保障、労働政策により深刻な状況の克服をあげています。また、3つの環境保護の持続可能な開発目標をあげています。

 

 環境自治体の採択


 環境自治体会議の2015年の採択では10項目をあげています。1,庁内環境配慮、2、エネルギー、3,交通・都市基盤、4,水環境、5,生物多様性、6,廃棄物・資源循環、7,地域資源活用型まちづくり、8,環境行政、9,環境学習・ESD、10,地域協働

 

 この環境自治体に参加するのは、正会員30と日本の自治体の全体の数からみればわずかでであるが、10項目の基本的な視点から、それぞれの特性から持続可能な地域循環的な未来社会へのとりくみをはじめているのです。水と生物性多様性というをことを大切にしての地域エネルギーや地域資源を生かした地域の創成活動をしているのです。2020年からを組織を人づくり、共生、循環を大切にして、SDGsの達成に向けたに再編するとしています。

 

 また、地域エネルギーや共生と循環社会の創出によって、地域での雇用を新たに生み出していくことも求められているのです。地方は、人口減少が著しく、過疎化が進行しています。過疎化は、豊かな自然の地域資源を生かして、循環社会を創成していくために大きな障壁になっているのです。

 どのようにして、地方での労働力を確保していくのか、都会の若者に対する地方で生きるロマンを具体的に示していくことが必要なのです。外国人労働者の受け入れについても同様です。

 日本で働くことによって、夢のある未来へとつながっていくことが不可欠です。そのためには、地域の日本人と共に夢を語り合う共同の学びと国際的なパートナーシップの精神によって、日本語・日本文化を習得させる義務が受け入れる側としての最低の義務なのです。

 

 海外依存と産業の空洞化のなかで新たな日本の地方産業再生

 

  経済のグローバル化は安価な労働を求めて発展途上国に工場の進出が急速に進んでいます。また、食糧の自給率が38%以下と、著しいが低下がみられます。エネルギーの自給にとっては、化石燃料で依存極めて深刻です。

 循環する経済にとって、グローバル化は、サプライヤーチエーンとして、部品や原材料の調達が日常的な地域からより離れていくのです。そこでは、災害、ウイルス感染等の公衆衛生の危機も生みます。また、国際紛争などで多くのリスクを背負うようになっているのです。

 

 地域資源を生かした技術科学の進行が切実に求められている時代です。日本の豊かな森林・竹資源を生かしたセルロースナノテクの科学技術は、鋼鉄よりも何倍も強く、軽量である素材の構築になります。

 

 自然を生かした地域循環経済は畜産や焼酎粕などの食品加工残渣をバイオマスエネルギー利用にすることもできます。水田地帯の潅漑用水や山間の傾斜地の小川を小水路発電に利用することもできます。さらに、公共施設の建物や自社施設内の屋根や構造を利用しての太陽光発電などによる地産地消の地域循環のエネルギー創出というスマートコミュニティのしくみなども地域循環経済の創造です。

 

短期的利益追求型ビジネスから長期的な土台の経営

 

 Sdgsを経営に積極的に提唱するモニターデロイトなどの論は、短期的利益追求型のビジネスから長期的土台のうえに、環境問題や社会的課題を積極的にとらえて、資本主義による社会的な副作用を抑えて社会的価値を創造していくことが求められるというのです。短期追求型ビジネスは短期利益の最大化、コストの最小化ということが社会的課題のブーメランになるというのです。

 

 それらは、安全衛生問題、低賃金、社内格差、不安定雇用、汚染、乱獲、伐採というミクロ課題から激甚自然災害、資源枯渇、政情不安、国民の健康・教育レベルの低下、政府財政の蔓延などのマクロ課題が起きて事業への影響も大きく起きるというのです。物流の断絶、調達の不安定ということで、市場や規制における予測可能性の低下、生産性の低下、消費ベースの縮小、租税・社会保障負担の増大が起きるというのです。

 

 その制御としては、外部規範の顔、法令や規制、投資家からのチエックが必要であるとしています。そして、積極的に市場開発のために、SDGsがあるというのです。長期的土台の上にSDGsの経営があるのです。

 

 自社の事業を支える地域自然資本は、人的資本、社会資本の確保と結びつくことが大切です。それは、事業が持続可能性をもつことができるというのです。企業の存在を長期に生存させるためには、経営の内発的動機として、社会課題起点の市場創出、再エネ市場の拡大、外部の利益関係者の関心に合致するルール形成などの攻めの新たな市場開拓があるのです。

 

 企業の大義とSDGs

 

 先進企業は、大義によって賛同した多くの環境NGO住民運動環境保護を推進する議会、行政、政府、地方自治体、消費者である市民の後押しを受けて環境ビジネスの市場拡大をつくりあげることが求められているのです。

 社会的課題に積極的に企業がとりくむことは、企業の大義力により、それは、新事業の創出によって、企業の力を大きくし、競争力にもなるのです。企業の大義力を組織的に強くしていくうえで、企業で働く人々の経営参加が極めて大きく、職場内参加民主義の形成が不可欠なのです。

 

 現代社会は、格差問題が大きくあります。職場の参加民主主義の問題でも雇用の保障、給与の問題、労働条件も忘れてはならないのです。問題は、働く人々が人間らしく豊かに生きがいをもって、未来への人類的課題に向かって意欲的に働けることです。また、企業の行動原理としての「利益の最大化」や「競争に勝つ」ということが、結果としての富の分配をどのようにしていくのかという課題があることを決して見落としてはならないのです。

 

 SDGs時代の新たな経営モデルの変化には、それらのことを要求しているのです。変革は企業のエゴシステムからエコシステムという社会的価値による新たな市場創造・拡大にあるのです。社会的課題の創出・拡大ということは長期の計画になってきます。経営には日進月歩の変化していく市場競争のなかで生きていかねばならない側面があります。

 

 とくに、資本規模の小さい中小企業にとっては、短期的経営目標によっての経営が余儀なくされます。大義のもとに長期的な経営計画と短期の経営計画という2面から経営のサイクルが必要になってくるのです。長期の大義の経営計画を継続していくうえで、個々の経営者、個々の企業ばかりではなく、社会的に支援していくしくみづくりがなければ実現しないのです。この意味において、業界団体、市民運動NGOとの連携、政府や地方自治体との連携などが不可欠になってくるのです。

 

 これらの技術を地域に確立して、そのシステムを輸出していくこともグローバルパートーにとって大切なことです。企業は積極的にエネルギーを自社や施設や近隣の施設で再生エネルギーを創出していくことが求められているのです。この企業のとりくみを社会的にして評価して、経済的価値ににつながっていくしくみづくりが求められているのです。

 

  SDGsによる地域創造と住民参加

 

  アメリカの社会学者のアーンスタインは行政への住民参加の最終目標を住民自身が主導して管理していけるように実効性ある市民自治をあげています。それに至る過程を8段階あげています。

 

 最初の段階は行政主導のまちづくりで世論操作による説得的な型です。そこには、当然市民からみるならば、ごまかしもあるのです。そして、第2の段階は不満をそらす操作でガス抜きをすることです。このふたつの段階は 住民の不参加の状況です。

 

 第3の段階が住民に情報を一方的に提供する段階です。そして、第4段階は意見聴衆したり、住民協議との協議をしたりすることです。これは形式的な意見聴衆です。第5段階は形式的な参加機会の増大です。ここでの行政は住民の意見のいいどこどりで、懐柔的な役割をもつということです。

 

 第6段階からが住民の権利としての参加のはじまりです。この段階から住民と行政が共に考え、共に行動するという協働というパートナーシップを築いていくことです。そして、第7段階は一部権限を住民に委任していくことです。第8段階の住民の参加最終目標は住民自身が管理して、住民主導になっていくことです。この8つの段階をアーンスタインは行政への住民参加として考えるのです。

 

 実効性ある地域住民の行政参加は、住民自身が管理していけるようになっていくということです。ここには、地域住民の社会的合意形成がなければならないし、SDGsの17の目標のように、問題解決には科学的合理性が要求されます。

 住民自身の学びと専門性、合理性という専門家の役割も大切になってくるのです。地域住民の社会的合意形成には地域における多様の関係者があり、その意見も様々であり、それらをどのように合意していくのかという地域における寛容の精神形成の課題が大きくあるのです。

 それぞれのエゴから、多様な意見や要求からの合意形成という市民的公共性への課題があるのです。ここには、寛容という精神形成が極めて大切なのです。この8つの段階を考えていくうえで、行政における住民参加の成熟性をみていくうえで、学校教育での地域課題解決の方法や自治の形成課題、住民自身の学びを決して忘れてはならないことです。