社会教育評論

人間の尊厳、自由、民主的社会主義と共生・循環性を求める社会教育評論です。

小型ガス化エンジンの串間木質バイオマス発電

小型ガス化エンジンの串間木質バイオマス発電

        神田 嘉延

 

 

 串間市にある木質バイオマス発電は、日本の各地にある大型・中型の直接燃焼の蒸気タービンの発電しくみではありません。今までのバイオマス発電は、木質を地域の木材だけではなく、海外からの木質ペレットやパーム油のヤシガラを使っている事例が多いい。串間の木質バイオマス発電は、小型の高効率のエンジンの木質バイオマス発電です。また、発電過程でバイオ炭がつくられることや排熱の有効利用として、おが粉の乾燥やバイナリー発電などをしています。全く新しい未来型の地域循環経済構築の仕組みづくりの挑戦です。

 見学には、前もって、串間市発電所に連絡が必要です。連絡先の電話は、0987-27-3370です。串間市に入って、112号線から役場から総合運動公園過ぎの近くで、右の広域農道沿いにあります。

 小型ガス化エンジンの串間木質バイオマス発電所は、発電の高効率を考えて、二酸化炭素の排出を抑えるバイオ炭をつくり、排熱利用なども徹底して、多くの煙が立ち上る木質バイオマス発電所とはイメージが大きく異なるのです。

 そもそも小規模のエンジン式の木質バイオマス発電は、高効率発電を求めるために、大規模発電には構造的に適さないのです。

 ところで、この発電施設は人類的な地域循環の夢をもたせるものです。現代は、地球温暖化の危機があります。人類は、地域循環経済による持続可能性が緊急に求められているのです。大量生産と大量廃棄物、大量消費の反省が必要な時代です。

 電気の分野では、いままで海外からの原料に頼ることが多かったのです。石油や石炭の化石燃料原子力発電、大型バイオマス発電などで、日本のエネルギー自給率が極端に低かったのです。エネルギー白書の統計で、2020年度は、11.2%です。

 現代の緊急課題は、日本の自然条件とその豊かな暮らしによる地域循環型のエネルギー創出が求められているのです。そのためには、外国からの輸入依存原の大型の発電装置ではなく、日本国内での自給率を高め、地域の自然循環による考えが大切なのです。小型の風力、施設や建物の有効利用の太陽光発電、水路などでの小型水力発電、小型地熱発電、小型バイオマス発電など地域や身近なくらしの範囲のなかでくまなくつくことが考えられるのです。

 日本は森林大国です。植林も活発にしてきた国です。しかし、人工林は人手不足によって、間伐が難しくなっています。山は荒廃しているのが現状です。この活性化のために、間伐材などの未利用木材を有効利用するため、小型のバイオマス発電所を地域ごとにつくっていくことは極めて大きな意義があります。

 小型のバイオマス発電事業によって、地域は、循環型経済として発展していくのです。このことは、人類的な未来社会への構築として、素晴らしいことです。

 宮崎県串間市の木質の小型高効率バイオマス発電所は、そのモデルとして、学ぶことがたくさんあります。地域の未利用の木材を有効利用すること。大型ではなく、小型にすることによって、地域循環からの材料供給であること。間伐や未利用の木材で林業が活性していくこと。

 さらに、小型のエンジン式バイオマス発電の製造工程によって、生まれる油がアロマやボデイオイルに使用できること。現在は試験研究中。また、蒸し焼きという製造過程で生まれるバイオ炭は、農地の土壌改良として大きな効果が期待されることです。排熱の有効利用として、ビニールハウスの活用として利用できることや排熱を利用した温泉利用の供給としての利用が可能ということです。すでに、串間いこいの里に供給しています。串間のガス化エンジンによる小規模バイオマス発電は学ぶことがたくさんあるのです。

 小型ガス化エンジンの串間木質バイオマス発電は、地元未利用の木材1万9千トン、全稼働で1940キロワットになります。それは、一般家庭4000世帯に相当します。ここでは木質バイオマス発電装置10基とバイナリー発電機1基を設置しています。ここでの発電は、蒸し焼き状態でガス化して、そのガスを利用してエンジンを動かして発電するしくみです。自動車とおなじしくみです。

 この発電の仕組みは、日本の地形、農村にはガスエンジン方式の発電が適しているのです。それは、小規模で高効率で採算・収益性が見込めるからです。また、制度的にも小規模発電は、林業の活性化と結びつき、国の農山村の地域活性化事業とも結びつきます。また、固定価格制度での2000キロワット以下で単価が40円×20年ということで、割高になっています。そして、地域の様々な異なる産業とも結びついていくのです。それは、林業ばかりではなく、農業や健康・癒し産業、観光業とも結びついていくのです。

 小型ガス化エンジンの串間木質バイオマス発電事業は、木質ペレットを低酸素状態で蒸し焼きして、熱分解ガス化して、可燃性のガスを散りだして、そのガスを内燃機関のエンジン発電を稼働させて発電するしくみです。ここではペレット工場を併設していることも特徴です。つまり、未利用材を粉砕して、おが粉にして、それを徹底して乾燥する工程を設けているのです。

 ペレット製造工程からガス化してエンジンで発電する工程、排熱を利用していく工程が絡めて合理的にシステム全体が効率的になっているのです。ガス化するペレットは、がん水率8%から10%まで乾燥させています。生木の未利用材を粉砕し、おが粉にして、含水率50%にして、乾燥機にとおして13%まで下げるのです。さらに、ペレット成型時の過熱で含水率8%から10%まで下げることをしています。

 ベルトオンベア方式でガスエンジン発動機の排熱で80度の温水をつくり、この温水を40度から60度で熱交換した温風を吹き付け、乾燥室内で、おが粉を過熱します。温風は4ケ所から吹き付け、1ケ所から排熱しています。乾燥装置の前方からおが粉は、ベルトコンベアの上で後方に移動しながら徐々に乾燥していきます。この乾燥のしくみがうまく機能せずに発火事故を起こして、1年近く正常に動かすまで時間がかかったのです。

制御やメンテナンスは大型のタービン発電よりも難しい面があるのです。

 多くの苦労があって、小型ガス化エンジン発電の排熱の有効利用のおが粉とペレット乾燥の技術が定着していくのです。ペレット製造工程と小型ガスエンジン発電とバイナリー発電の工程が有効利用のために運用されているのです。まさに、様々な側面から先進的なバイオマス発電のしくみです。

 挑戦には様々な困難が伴います。地域の連携や理解も大切です。発電以外に副産物として生まれるバイオの有効な利用には、地域の農家や農業生産法人の協力が不可欠です。農業の土壌改良などの積極的連携が求められていくのです。農業改良普及教育行政との絡んでいくことが必要です。

 また、製造工程によって、生まれる油がアロマやボデイオイルに使用できることの試験研究に、地域の大学や試験研究機関の積極的な協力も必要になっています。小型ガス化エンジンの串間木質バイオマス発電の挑戦には、発電所だけではなく、地域の様々な連携と地域の人々の積極的な協力関係が必要になっていると考えられます。学校教育や社会教育として、地域の誇りとしての新たな挑戦を理解していく環境教育も求められているのです。