核兵器禁止条約が2021年1月22日から発効された。この条約は、2017年7月7日に国際連合総会で採択されたものである。核兵器全廃に向けた包括的に禁止する条約である。対象は核兵器で、平和目的での核利用は禁止していない。核兵器、核爆発装置の所有、保有、管理していた締約国が申告を要する点が重要なこと。核兵器を国際条約という法的拘束力で禁止していくものである。
条約を賛成する国が五〇ヶ国以上の批准によって、発効することになっていた。2021年1月の現在で五二ヶ国の批准である。
唯一の被爆国である日本国政府は、この条約の国連総会の賛成署名もしていない。条約を批准する国民運動を政府として行っていません。
しかし、核兵器全面禁止の日本国民の自主的運動は、世界の核兵器禁止条約の運動をリードしてきた。広島、長崎を先頭に日本における民衆の核兵器の恐ろしさの訴え、核兵器全面禁止の国民運動が実ったのである。
(1)人類を救う哲学としての世界連邦政府構想
ノーベル賞を日本人としてはじめて受賞した湯川博士は、生前に原子爆弾の登場により、人類の行く末を案じて世界連邦政府を提唱し、その運動を積極的に展開した。
世界連邦運動は、大量殺戮兵器の原子爆弾の惨害を体験した日本の役割がある。日本は、憲法9条によって、軍備と交戦権をもたない平和主義の理念をつくった。それは、科学・技術の発達と戦争による滅亡的な悲惨ということから、人類史的意義をもっているとする。科学・技術の進歩の思想に歯止めが絶対的に要請されている核時代であるからこそ、憲法9条の意義は大きいとする。
人類は進歩によって、自滅の可能性がでてきた。核時代の政治家にとって、世界の平和ヴィジョンは、世界連邦への道であり、日本国憲法の戦争放棄、戦力の不保持の誓いを世界に示しているというのである。武力による国際紛争の解決の時代錯誤が明白になっている。世界連邦構想は、新しい時代の良識を担う非核兵器地帯の拡大と非軍事的地域安全保障の前進がある。
稲盛和夫と梅原猛は、対談形式の著作「人類を救う哲学」のなかで、究極の世界平和のためには、世界連邦政府の樹立であるとしている。湯川博士たちの遺志を継ぐべきときであると。世界連邦政府のような組織は、人類の英知を結集して、核拡散問題、環境問題、資源問題を考えるときに重要な問題提起であるとしている。
この世界連邦政府の構想についは、湯川秀樹とアインシタインの「戦争と科学の世紀を生きた科学者の平和思想」として、同じ物理学者の田中正が著書で詳細にまとめている。田中正は、二〇世紀を戦争と科学の世紀であったとする。
そして、現代は核の時代だとする。それは、原子爆弾の強大な破壊力の出現にとどまらない。21世紀に入った今日、現代の科学・技術を足場に加速するグローバリゼーションによる不安定な競争社会が、貧富の分極をつくり、地球環境を生み出し、より深刻な新たな人類的危機をもたらしたとする。
日本国憲法の平和主義は、人類的な理想である永遠平和の道を示し、世界連邦への実現の道を示している。しかし、日本国民自身が、その役割の重要性と誇りに十分に認識されてきていないのも現実である。
そして、稲盛和夫を嘆くように、その声はだんだん小さくなり、大変残念なことである。「現状を受け入れるしかない。そのような構想は非現実的だ」という声が支配的になり、みんな真剣に理想を追求しようとしない、今こそ湯川博士たちの遺志を継ぐべきはないかと稲盛和夫はのべる。
世界連邦政府構想に近づけていく努力が永久平和達成ではないか。さらに、世界連邦政府のひな型にEUはなりうるのではないかと稲盛和夫は述べる。
これを拡大させていくにはどうしたらよいのか、世界の為政者は各国は、自国の利害からの対立ではなく、全人類・全民族共通の平和への地道な努力が求められている。国連など、平和のための世界連邦政府をめざして、知恵を働かすべきであるというのが稲盛和夫の提案である。
稲盛和夫は、世界連邦政府の構想の実現に、当面、最初は韓国、中国、日本の三国だけでも平和のための連邦でまとまることが必要であると提案する。人類が争いながら発展してきたのは過去の話である。人類は自らを滅ぼしかねない強力な科学技術を手にした。このまま争い続けるならば、人類の未来はないと。
21世紀は争いの文明に終止符をうち、お互いが助け合う共生の精神に基づく文明をつくりあげていかねばならないときである。
過去の国家のエゴ、民族のエゴ、宗教のエゴなど、お互いの利害ばかり主張した時代からお互いの利害を超え、お互いが助け合い、慈しみ合いながら、平和で思いやりのある世界をつくる。そのなかで互いの文化を尊重しながら、地球規模の新しい文明を構築していく時代であると。稲盛和夫は共生の新しい文明の創造を力説する。
稲盛和夫は、国益を守ることが傲慢さを助長しているとする。地球に住むあらゆる生物は、太陽の恩恵で生きている。古代エジプト人は、太陽を神として崇めていた。現代人もこの自然の偉大な力に対し、敬虔な気持ちをもたなければならない。
それは、人間の傲慢さにブレーキをかけることになると稲盛和夫は述べる。そして、国家という存在自体が傲慢さをもたらしていると。
国家は、みな国益を守ろうとする。その国益とは国家のエゴで、当然、衝突が生まれ、最初はごくわずかな領土の帰属問題の小さな火種が、やがて大きくなり、核の拡散が進んでいる現在、核戦争の事態を誘発するかもしれない。
自分の国の利益だけを主張していたのでは、人類は生き残れない。利他の心をもって、人類全体の益を考え、みんなが平和に、繁栄を持続できる隣人関係を国際社会につくりあげていかねばならないということを稲盛和夫は力説するのである。この稲盛和夫の主張は、国家の傲慢さは、国益からであるとして、国益ではなく、国家間でも利他をもって、世界連邦政府への実現の道をすすめていく理念である。
国益、民族間の利益、経済的権益、宗教や文化の争い、政治体制、価値観の違いによって、現実の世界各国では紛争が絶えない。宗教や文化、イデオロギー、さらに経済的利害のぶつかりあいによって、民族、国家を超えて武力による争いが起きている。世界戦争の危機さえある。核抑止論、軍事同盟の強化による集団的自衛の軍事的抑止論など軍事力による世界のブロックも一方では進んでいる。この動きは、軍事的な弱小国が一層に凶暴な一般民衆を巻き込んだ無差別なテロ行為に走っていく状況を作り出している。
2001年9月11日にアメリカで世界貿易センタービル、国防省にハイジャック機による同時多発テロ事件が起きた。2001年10月7日にアメリカはアフガニスタンに空爆を開始した。圧倒的な軍事力でタリバン政権は二ケ月で消滅した。2002年1月の一般教書演説で、イラク、イラン、北朝鮮を悪枢軸として、テロ国家ときめつけた。
2003年3月17日、先制攻撃となる空爆を行った後、ブッシュ大統領はテレビ演説を行い、48時間以内フセイン大統領とその家族がイラク国外に退去するよう命じ、全面攻撃の最後通牒を行った。2日後の3月19日、イギリスなどと共にイラク攻撃を開始した。イラク攻撃には、フランス、ドイツ、ロシア、中国などが強硬に反対を表明した。戦争理由として、生物・化学兵器等、大量破壊兵器を保有しているということであった。事実は、大量破壊兵器は存在しなかったのである。
強大な軍事力でイラクの国家指導体制を崩壊させた。非人道的なクラスター爆弾、核燃料の製造過程できる劣化ウラン弾、巡航ミサイルトマホークなどの精密兵器が大量に使われた。また、小型核爆弾に匹敵する燃料気化兵器の使用も疑われている。その地域では、テロ行為の発祥地になっていった。アメリカをはじめ、その同盟国は、テロとの戦いが国際的な地域の規模で起きているのである。
また、イスラエルとパレスチナなどの民族間と宗教問題の絡む戦争も果てしなく続く。クロアチアとセルビア人の紛争、アアリカのルワンダ紛争によるフツ族によるツチ族の大量虐殺など民族間の憎しみあいの増幅による戦争も深刻である。スリランカ内のタミル人の問題、漢民族とウイグル族などの多民族間国家内の統治をめぐっての紛争。これらは、国益、民族益、地域益、宗教、資源の争奪からくる集団的憎しみを乗り越えての平和構築の課題探求があるのである。どのようにして、紛争や戦争を乗り越えて、新たな課題としての共存・共栄の共生の文明によるブロックごとの平和共同体づくりをしていくのかは重要な課題である。
イラク戦争は、現代の国際平和を考えていくうえで重要な問題を提起している。独裁国家であるフセイン体制ということで、武力でアメリカを中心とする有志連合が崩壊させたのである。崩壊してアメリカをはじめとする有志連合国が占領するが、生物による大量破壊兵器はみつからず、その後、国内は宗教間、民族間の争いは激化し、アメリカを中心とする有志連合国に対する憎しみも深まったのである。
以上のように、現実世界情勢は、戦争か平和かという問題は、極めて厳しいところにある。この厳しい情勢であるがゆえに、世界連邦政府の理想をかかげて、平和のために世界を共存と共栄ということからあらゆる価値を認め合い、多様な文化を尊重し、寛容の精神をもっていく共生文明が切実に求められているのである。
この際に、稲盛和夫も強調するように、自国のエゴ、民族のエゴ、宗教的なエゴを棄てて、大きな人類的理想の平和文化を築いていく共生文明が求められているのである。この共生文明を築いていくうえで、日本のもっている人類史的な役割は、憲法9条の精神を守っていくことである。稲盛和夫は、現在の憲法9条だけではなく、前文も含めての平和主義という理想は極めて大切としている。国家間の信頼ベースとして、憲法9条の平和主義があるということである。
稲盛和夫は憲法9条の平和主義を貫いていくことは、ほんとうに勇気ある日本であるということである。いま、憲法の改正論議があるが、大変に心配していると今の世界情勢のなかで、勇気ある選択をしてほしいと稲盛和夫は述べているのである。
ところで、世界連邦構想は、人類史的にも大きな課題である。近代社会がはじまる頃から多くの思想家や哲学者が提唱してきたことである。広島と長崎の核兵器の投下は、世界連邦構想が切実になったときである。
世界連邦構想は、哲学者で法政大学の総長をした谷川徹三も提唱している。世界連邦は、200年前の近代の人間論を基礎に理性的認識を考えた近代哲学者のカントの永久平和論に世界連合構想が提起されていた。この意義を谷川徹三は現代的に解釈している。ヒューマニズムの普遍的な問題は、200年前と変わらないということである。
しかし、広島に原爆が落とされ、世界各地に世界連邦政府運動の団体が出来て、1947年に世界連邦政府運動の第1回の大会が世界から20ヶ国の代表500名による大会がスイスのモントルーで開かれるという新しい時代になっているとしている。この大会の宣言は、国際連合の現在の構成されている状態では戦争を防止することができない。
世界連邦主義者は、今重要なことが世界連邦を創設することであるとしているのである。それは、自由企業か統制経済か、資本主義か共産主義かではなくて、戦争からの永遠の解放は世界連邦の設立としている。モントルー宣言は、5つの原則として、1,全世界参加、2,国家主権の制限、ならびに世界問題の管理に必要な立法権、行政権、司法権の連邦政府への委譲、3,個人に対し連邦政府の権限内において、直接に法を適用すること、すなわち人権の保障および連邦の安全に対する一切の侵犯の抑圧。 4,超国家的軍隊の創設と、連邦構成要素たる諸国家の警察力以上の武装解除。5,原子力その他大規模の破壊を生む可能性あるあらゆる科学的発見に関する一切の権利を連邦へ付与するとしている。
以上の原則を踏まえて、具体的な方策として、1,世論の動員によって、政府ならびに議会に国際連合の権限および基礎を強大にさせること、さらに憲章の改正によってそれを世界連邦にまで変形させること。2,世界憲法制定会議を遅くとも1950年には開催することができるように諸般の準備をすること。以上のように、哲学者の谷川徹三は、モントルー原則とその具体的な方策の決議の大切さを要約しているのである。
モントルー原則を具体的な方策にしていくうえで、国際連合の機能と国際的な専門機関を世界連邦政府へと近づけていくことを強調しているのである。そして、当面は、ヨーロッパ連邦等の地域レベルで現実的にしていくことが必要としている。
広島と長崎の原爆投下によって、世界の平和問題は、全く新しい状況になっていることを世界の良識ある科学者と文化人は考えるようになっている。それは、人類的危機、地球の破滅という核戦争を絶対に阻止しなければならないということが差し迫っている平和の課題になっていることである。この課題のために核兵器の全面的全廃という課題があるのである。
しかし、核抑止論ということが核軍備の競争に拍車をかけているのである。核戦争へのいっさいの可能性をなくすことは、核兵器の全廃である。ほとんどありえないと考えていた原子力発電の爆発事故が起きたのは、福島の原発事故であった。核戦争の問題も核抑止が暴走しないとも限らない。
(3)東南アジア諸国連合の平和ブロック
世界のブロックごとに平和の砦をつくっていくことは、当面世界連邦政府への道筋の具体的な方法として重要である。このことで、東南アジア諸国連合の動きは注目することである。ASEAN憲章は、地域の平和、安定、地域の平和Nの2006年首脳会議の合い言葉は、「一つのビジョン、一つのアイデンティティー、一つの共同体」としていることである。
マレーシアのクアラルンプールで、国防相会議を開き、その共同声明を出した。防衛・安全保障分野の対話と協力を通じての地域の平和と安定の促進する。国防政策、脅威の認識、安全保障への挑戦に関する相互の信頼と理解の促進する。2020年までASEAN安全保障共同体 (ASEAN Security Community: ) 創設への確認した。2003年の会合でASEAN各国首脳は,「第二ASEAN協和宣言」を採択し,2020年までに「政治・安全保障共同体)」,「経済共同体(AEC)」,「社会・文化共同体」から成る「ASEAN共同体」を設立することで合意したのである。 ASEAN安全保障共同体は2015年11月に発足したのである。
2008年12月5日にASEAN憲章は発足している。その内容は六点にわたっている。
1,地域の平和、安全、安定を維持する。
2,核兵器や大量破壊兵器の存在しない地域としての東南アジアを維持する。
3,安定、繁栄し、高度な競争力を有し、経済的に統合されたタン一市場と生
産地を創出する。
4,ASEAN域内での貧困を削減し、域内発展格差を縮小する。
5,民主主義を強化し、グットガバナンスと法の支配を強化し、人権と基本的
自由を促進する。
6,地域アーキテクチュアにおける域外パートナーとの関係協力において主
要な推進力であるASEANの役割を維持する。
以上の内容をASEANの憲章として各国が合意して、ASEAN共同をつくったのである。この憲章内容は、域内の平和と安全、安定ばかりではなく、他の地域へのモデルにもなっていく人類史的な意義をもっている。
ASEAN諸国が平和的に生存するために政治・安全保障協力のレベルを高める。地域間相違の解決は平和的手段のみを用いる。 幅広い側面を有する包括的安全保障の原則に意する。軍事同盟の形式ではない。国内問題について外部から干渉を受けない。 国連憲章・国際法を遵守し、ASEANの原則を堅持する。 海事協力は本共同体の進化に資する。 東南アジア友好協力条約理事会は本共同体の重要な構成要素となる。ASEAN地域フォーラムは地域の安全保障対話の主要なフォーラム。 本共同体は外に開かれたものである。
テロ対策等国境を越える犯罪に対する能力を強化するため、既存の制度を十分活用する。大量破壊兵器のない東南アジア地域を確保する。 国連その他の地域・国際組織との協力強化を目指すものである。
稲盛和夫や梅原猛が提起する東アジア連合構想のモデルにもなるものである。日本中国、韓国は、同じ漢字文化圏で大なり小なり儒教と仏教と道教の影響が国民の仲に残っており、道徳観も共通するところがあるということで、まずは三国が共同体をつくり、アジアイ共同体に広げていくべきと梅原猛は、稲盛和夫との対談集でのべている。
稲盛和夫は、この提案を受けて、最初は三国だけでもまとまることは大切としている。三国がまとまればASEANの方にもひろがるでしょう。国際問題を根本的に解決するには、世界連邦国家みたいな発想が必要で、その先駆として、EUがあり、AU(アジア連合)みたいなものをつくる必要があると述べている。
2006年9月15日、16日のキューバのハバナで第14回非同盟運諸国首脳会議が開催された。そこでは、非同盟運動の目的と原則が再び確認された。ここでも前回のクアラルンプール宣言と同じように国連の役割を次のように確認している。「非同盟運動が創立された理念、原則、目的にたいする、また、国連憲章に明記された原則と目的にたいする誓約を再確認した」。
非同盟諸国の首脳会議は、非常に複雑な国際情勢で開かれた。多国間主義の強化、貧困、及び疎外の激化という世界経済の構造的不均衡と不平等を深刻化させているという認識であり、そのもとに安全と福祉はかってない試練に直面しているということである。このことに次のように宣言では強調する。
「国家・政府首脳は、第14回非同盟運動首脳会議が非常に複雑な国際情勢を背景にしておこなわれているとの全面的な確信を表明した。 政治的レベルにおいては、国際的および国連憲章の諸原則適用の尊重ならびに多国間主義の強化にもとづいて、多極世界を構築するという目標を促進する必要性がある。
経済レベルでは、グローバル化の進行のなかで、低開発、貧困、飢餓、および疎外化が激化し、国際経済秩序に影響をもたらす構造的不均衡と不平等を深刻化させている。 われわれの諸国の安全と福祉は、かつて経験したことのない試練に直面している」。
このようななかで、ハバナ宣言は「 国家・政府首脳は、人々が尊厳と幸福のもとで生活する権利を強調しつつ、開発、平和、安全および人権のあいだの相互補完性を再確認した」。そして、国際政治情勢のなかで2つの対立するブロックが存在しなくなっても非同盟運動の必要性が低まったということは決してないとつぎのように表明する。
「 国家・政府首脳は、非同盟の原則と目的が引き続き有効で通用するものであると改めて強調した。 2つの対立するブロックが存在しなくなったことで発展途上国の政治的調整のメカニズムとしての非同盟運動を強化する必要性がいささかも低まるものではない」と表明している。
とくに、非同盟諸国は、大国の単独行動主義と干渉に強く警戒しているのである。非同盟運動は、国際的に格差や疎外問題が深刻化するなかで、非同盟運動の活性化を提起している。そして、現在の国際情勢のなかで、非同盟諸国が国際関係に影響力を行使するとりくみが必要であり、非同盟諸国の団結と連帯が必要としている。
国際的な犯罪やテロなどの国際的脅威に立ち向かうことで、非同盟諸国は、主導的な役割をはたすべきと次のように合意している。
「国家・政府首脳は、関連する国連文書にそった達成している。能な戦略の整備を通じて、多国籍組織犯罪、違法な麻薬の取引を含む世界の麻薬問題、人身売買、小火器、小型兵器の違法な取引、およびテロなどの世界的な脅威に立ち向かうなかで加盟国間の取り組みを調整するうえで、非同盟運動が活発な主導的役割を強化する必要性を強調した」。
非同盟諸国は、具体的に運動の目的をもって行動をすべきとしている。それは、まず 第1は、国際的な様々な問題で、国連を重視である。国連の持っている役割のなかで非同盟運動の位置を明確にしている。そして、国連の果たすべき役割は、「多国間主義を促進、強化」「国際関係システムにおける共通利益を促進・擁護。そのための発展途上国の政治的調整」「全会一致によって合意された共有の価値観と優先課題にもとづいて発展途上国間の統一、連帯」「平和的手段によってすべての国際紛争を解決する」。「国際法とくに国連憲章に明記された諸原則にもとづいて、すべての国々のあいだの友好・協力関係を促進」と6つをあげている。
国際平和と安全であることが明確に非同盟諸国の共同意志として合意されたのでる。非同盟運動は平和共存を理念にしてきたが、ハバナ会議での確認では、すべての体制の違いにかかわりなく、平和共存の再確認を次のようにあげる。
「政治、社会、経済上の体制にかかわりなく、諸国間の平和的共存を促進する」「単独行動主義、および、国際関係において覇権主義的支配の反対」「国および諸国グループによる武力行使の威嚇、侵略行為、植民地化、外国の占領およびその他の平和の破壊に共同の対処、調整」と三つをあげている。
ハバナ宣言では、武力行使の単独主義や覇権主義を強く非難し、国際平和のための共同行動や調整を重視しているのである。そして、それを担っていく国連憲章の確認とその実践の提起である。非同盟諸国にとって、国連の役割を重視しているが、そのためには、国連の民主化も重要な課題であるとつぎのように提起する。
「国連の強化と民主化を促進し、国連総会に、国連憲章に規定された機能と権限に従ってそれにふさわしい役割を与える。そして、安全保障理事会が、国際の平和と安全を維持する主要な責任をもった機関として、国連憲章によって与えられた役割を透明性と公正さをもって遂行できるように、その包括的な改革を促進する」と積極的に国連の改革案を提起する。そこでは、すべての体制を容認しての平和共存の重要性と国連憲章を実施していくうえでの単独主義や覇権主義ではなく、国連合意のもとでの安全保障理事会の役割を強調しているのである。
現代の国際的な政治で、平和共存に最も障壁になっていることは、アメリカ等の単独行動主義による覇権主義である。国連の強化と国連の民主化が強く求められていることを非同盟運動のハバナ会議では共同の確認をしている。
さらに、核兵器の廃絶と軍縮問題は、ハバナ会議の合意書では大きな提起である。そこでは、次のように指摘する。
「普遍的かつ差別のない核軍縮、ならびに、厳格かつ効果的な国際管理のもとでの全面完全軍縮をひきつづき追求する。この文脈で、核兵器を廃絶し、核兵器の開発、製造、入手、実験、備蓄、移送、使用、および使用の威嚇を禁止し、核兵器の廃棄を規定するために、具体的な時間枠のなかでの核兵器全面廃絶を目的とする段階的プログラムの合意に達するという目標にむかって努力する」「一方的で不当な基準をもとにして、国々の善、あるいは悪であると分類することに反対し、それを非難する。また、核攻撃をふくむ先制攻撃ドクトリンの採用に反対し、それを非難する。それは、国際法、とりわけ核軍縮にかんする法的拘束力のある文書に矛盾する。さらに、非同盟諸国の主権、領土保全および独立にたいする一方的軍事行動、武力行使または武力行使の威嚇を非難し、それに反対する」。
一方的な軍事行動、武力威嚇は、非同盟運動にとって大きな脅威になっており、国際法によって、緊急に核兵器を段階的に削減していくことが求められているのである。この非同盟諸国のハバナ会議の核兵器廃絶と軍縮の合意は、現在の国際平和を求める緊急の人類的な課題である。
1999年に国連は、非核兵器地帯の創設に特別の関心をはらった。それが地球規模に拡がることによって、世界から核兵器をなくしていくことになるとしたのである。非同盟諸国のハバナ会議でもこの国連の特別総会の文書を次のように大切にしている。
「第1回国連軍縮特別総会の最終文書の条項および1999年国連軍縮委員会によって採択された諸原則にしたがって、新しい非核兵器地帯をそれが存在していない地域に創設するために、関係地域の諸国間で、自由に達せられる合意を締結するよう勧奨する。非核兵器地帯の創設は、地球規模の核軍縮と核不拡散にむけた積極的一歩であり重要な措置である」「核エネルギーの平和利用における国際協力を促進する。また、発展途上国に要請された、平和利用のための核技術、核設備および核物質の入手を容易化する」
非同盟運動は核兵器全面廃絶を要求し、核攻撃をふくむ先制攻撃ドクトリンの採用に強く反対し、非難するとしている。さらに、非同盟諸国の主権、独立に対して、一方的軍事行動、武力の威嚇を非難している。
非同盟運動の行動は、国連憲章と国際法の原則の尊重である。ハバナ会議では、平和共存によるすべての国の主権尊重、領土保全を大切にすることを合意したのである。そして、非同盟諸国が自らその理念のもとに国内の体制を充実していくことが含まれている。
「国連憲章ならびに国際法に規定された原則を尊重すること」「すべての国の主権、主権平等および領土保全を尊重すること」「あらゆる人種、宗教、文化の平等を承認し、また、大小を問わずすべての国の平等を承認すること」「宗教、その象徴および価値観を尊重し、および寛容と信教の自由の促進と強化にもとづく、諸国民、文明、文化、宗教間の対話を促進すること」「平和と開発を享受する人民の権利の効果的な具体化を含め、万人のためのすべての人権と基本的自由を尊重し促進すること」
あらゆる人種、宗教、文化の価値を尊重し、対話を促進することが、すべての民族、国の人権と自由を尊重することであり、それは、国際平和の構築にも貢献することである。そして、民族の自決の権利と主権を尊重し、国家の内政への不干渉、体制転換の策動をしないこと、紛争に雇い兵をとらないこと、全面的侵略または間接直接の武力行使をしないことなど厳しい提起をしている。
この要求に対して、日本の世論では、アメリカ等の先進国なしにはありえないことであるとみる。しかし、非同盟諸国首脳では、この問題について真剣に議論し、その危険性に対して警告し、アメリカ等の先進国との対話、国連の役割、国連の民主化を重視しているのである。