社会教育評論

人間の尊厳、自由、民主的社会主義と共生・循環性を求める社会教育評論です。

大分国東半島の世界農業遺産と地域循環経済構築

大分国東半島の世界農業遺産と地域循環経済構築

 

 国際連合食糧農業機関(FAO)は、2002年から世界農業遺産認定の活動をはじめました。その内容は、重要な伝統的農業・林業水産業生物多様性、伝統知識、農村文化、農業景観を保全し、持続的な活用を図るための認定をすることです。
 その認定基準は、 1.食料及び生計の保障。地域コミュニティの食料及び生計の保障に貢献することです。

 2.農業生物多様性として、食料及び農林水産業にとって、重要な生物多様性及び遺伝資源が豊富であることです。

 3.地域の伝統的な知識システム。これには、「地域の貴重で伝統的な知識及び慣習」「独創的な適応技術」及び「生物相、土地、水等の農林水産業を支える自然資源の管理システム」の維持です。

  4.文化、価値観及び社会組織 。地域の特徴になる文化的アイデンティティや土地のユニークさを認め、資源管理や食料生産に関連した社会組織、価値観及び文化的慣習が存在することです。

 5.ランドスケープ及びシースケープの長年にわたる人間と自然との相互作用の発達と共に、安定化し、緩やかに進化してきたランドスケープやシースケープを有することです。
 これらの システムの持続性のためには、保全計画が求められています。

 世界では22カ国62地域で、アジア地域37地域(日本11地域)、アフリカ10地域、欧州7地域、中東2地域、中南米4地域です。(2022年1月現在)日本は国東半島、トキとの共生、能登里山、静岡の茶草場農法阿蘇の草原、長良川の鮎、みのべ・田辺の梅、宮城県の大崎耕土法による水管理の水田、静岡の水わさび、阿波の傾斜地農法。

 大分国東半島の世界農業遺産の特徴は、クヌギとため池がつなぐ循環システムが15世紀からそのままの続く農村風景。自然循環型の伝統的農業を現代まで生きていることと同事に、地域の伝統文化との関連が深くあることです。それは、神仏混合の修験道文化です。その歴史文化について、ブログに神田はすでに記載しているので、参照をしてもらえれば幸いです。

国東半島の六郷満山と修験道: 神田 嘉延ー歴史文化の旅から学ぶシニア人生ー (webry.info)

国東半島の六郷満山(2)ー文殊仙寺と岩戸寺: 神田 嘉延ー歴史文化の旅から学ぶシニア人生ー (webry.info)

 さらに、この地域では、伝統的な農村文化のなかで、自然思想、科学思想の優れた人類史的な日本の思想として価値をもつ三浦梅園や帆足万里などの傑出した思想家があらわれていることです。

 

豊後高田市の田染荘の取り組み

 

 高田市の田染荘は神仏混合や修験道の優れた文化遺跡があります。それらを地域の人々が長年にわたって守り続けてきたのです。この地域は宇佐神宮との関係が深く、富貴寺大堂は、九州最古の木造建築物です。大堂壁画には、極楽浄土の世界が描かれています。

 真木大堂は、かつては六郷満山の大寺院として栄えたところです。木造大威容特明王像、木造阿弥陀如来像、木造不動明王と、四天王立像、二童子象の九体の貴重な文化財が大切に管理保管されています。大威徳王象は、六つの顔(地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、人間界、天上界)。天井気塊の六つの腕(矛、長剣など守護)、六つの足をもっています。木造としての日本一大きな大威徳王象です。密教彫刻の大作です。神の使いの水牛にまたがっている象です。水牛という南方からの使いということなのです。

 熊野磨崖仏は、大日如来像と不動明王像があります。大日如来は、密教の本尊とされるものです。これらの像は、鎌倉初期の文献に確認されています。それ以前の平安期につくられたのではないかと推定されます。

 

地域文化の磨崖仏

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富貴寺

 

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真木大堂の大威徳王像のポスターから

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真木大堂から修験道の山登りで金比羅宮に。

 

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田染の世界農業遺産の取り組みは、鎌倉時代から変わらない台薗(だいそん)集落で、中世からの屋敷名や地名が古文書から現在と同じであることが確認されています。荘園の風景も変わらず維持されているというのです。

 古文書では「末が末でも、一味同心の思いをなしえ(皆々で思いを一つにして)の古文書に書かれていることを大切にしてきた地域です。田染荘は、宇佐八幡宮の本御荘18ヶ所とよばれる根本荘でした。

 千年近い歴史をもって伝統的な農村風景を維持してきたことは、宇佐八幡宮と関連が深かったのです。土地の自然の形状を有効に活かした水田の形成をみることができます。ため池を集落の里山の各地につくり、田越しの水田から水田へと水を流す灌漑方法をしているのも特徴です。

 訪問客のセンターとして、ほたるの館と郷土の味レストランもつくっています。また、民泊に九軒の地域の人たちが協力してくれていますので、宿泊の教育の活動にも利用できるしくみになってます。田染地区のおいしいものとして、しいたけの甘辛煮付け、マコモのきんぴら、フキの佃煮、安心安全な田染荘園米を売り出しています。

 

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夕日朝日観音

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夕日観音からの田染荘の田園風景

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国東市の旭日地区のため池めぐり

 ため池の連携システムを行っているのが、旭日地区の特徴です。国東半島では、山の傾斜地も多く、大きな河川がなく、川はすぐにかれてしまうということから、昔からため池が積極的につくられてきたのですが、旭日地区は大きなため池も無理なことから、ため池との連携をしているのです。

 6つのため池を用水路でつないで、再上流にあるため池は、水稲の生育期と後期用として蓄えているのです。ため池と用水供給システムを継続的に運用するようになっています。さらに、クヌギ林を活用しての地域産業づくりを行っているのです。クヌギは、根元から切らずに、伐採すれば再び再生するという性質をもっています。森の恵みのしいたけのふるさととして、クヌギの保水性を利用しているのです。

 田染荘も旭日地区の取り組みも次の世代に広く継承してもらいたいということで、教育活動に積極的に取り組んでいるのです。地元の小学校、中学校、高校はもちろんのこと、修学旅行などの教育旅行に積極的に利用してもらっていることです。さらに、交流人口の拡大として、青年や大人達の視察や研修野受け入れをしていることです。そのなかで、移住者の斡旋もしていることが特徴です。地域の後継者ということを地元のみに限定していない取り組みをしているのです。

 このためには、地域の人々が、自分たちの住んでいる地域について、深く学ぶということで、世界農業遺産のとりくみとしての社会教育活動をしていることです。また、学校教育として、農業遺産の内容についいて、独自にテキストをつくって学習していることです。

 

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山のなかにも降った雨をため池に流すように水路をうくうています。

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 集落には、山の裾野に土手のダムの堤防をつくってため池にしています。国東半島はいつも流れている川がなく、雨が降ったときに川ができますが、すぐに川はかれてしまうため、降った雨は大切にして、ため池にためる慣行が昔からあったということです。

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