社会教育評論

人間の尊厳、自由、民主的社会主義と共生・循環性を求める社会教育評論です。

喜界島の小中高校の一貫教育と地元学

 

農は脳と人をよくする ―子どもの発達と地域― 改訂版

農は脳と人をよくする ―子どもの発達と地域― 改訂版

 

 

喜界島の小中高校の一貫教育と地元学
      
 喜界島教育委員会は、喜界学として、喜界島の歴史文化、地域の暮らし、地域の誇りを形成して、地域の絆、連帯を構築していく地元学の教育実践をしている。この実践は、喜界高校を頂点に中学校から小学校まで、きめ細かに地域ごとの教材づくりによる教育実践をしている。

 喜界島の生活にとっての水の大切を歴史的に調べる活動し、通称ドッカンという水の広場から昔は水瓶を頭にのせて、苦労して運んできたことや喜界島の地下の水系などを調べている。集落後との手作りの製糖工場の意味の発見し、喜界島の農業の特徴を調べ、考えさせているのです。喜界島の特産であるゴマ生産を健康との関係で学んでいるのである。
 
 歴史的には、古代からの貿易の拠点であることが近年の考古学の発掘調査で明らかになった。2002年から9世紀から15世紀の城久の調査が行われ、中国産の青磁白磁が多数に出土され、大規模な建物遺構も発見され、砂鉄から鉄をつくる製鉄炉も発見されている。484棟の遺跡が確認されている。

 喜界島の9世紀から12世紀は、ヤコウガイの役割が大きかったとみられる。ヤコウガイは、螺鈿(らでん)細工として、平安時代に装飾品に加工されのである。平安貴族は、ヤコウガイ螺鈿細工の装飾品を大変に好んだということである。ヤコウガイは、貝の表面を削り、磨きをかけると輝きをもった表面に変わる素材になる。この素材を利用して、螺鈿細工をするのであった。喜界島周辺の海には、現在でもヤコウガイが採取できるのである。

  喜界島の城久遺跡は、8つからなり、13万平方メートルと広大になる。大宰府出先機関ではなかったといわれるようになっていることである。これらの歴史的な事実は、子ども達に喜界島が、先進的な文化をもっての交易の拠点として、古代から発展していたことに大きな誇りももつようになっている。

 喜界町は3つの中学校と一つの高校による地域連携型の中高一貫教育を平成12年から県教育委員会研究指定を受けて、実践をはじめている。この地域連携型の中高一貫教育を喜界学という地域教材に焦点をあてて教育実践している。


 地域連携型の中心軸にしたのが喜界学である。これは、総合的学習、進路指導、各教科の地域教材などによって実践している。 喜界学は、地域連携型の中高一貫教育ばかりではなく、小学校での特色ある教育実践として、積極的に展開しているのが特徴である。


 さらに、小学校での特色する地域教育実践において、校区の住民が参加しているのも大きな特徴である。この校区の住民が特色ある学校教育実践に積極的に参加していくのは、子育てにおける地域の一致したまとまりであり、子育てが校区住民のまとまっていくうえで、地域アイデンティティ形成をしているのである。


 喜界町の教育における基本的な理念は、町づくりは人づくりからということで、ふるさとと自らに誇りをもつ教育実践の施策を展開している。地域連携型の中高一貫教育における軸に喜界学を設定したが、それはふるさに誇りをもたせるためである。そして、教育の成果は、子どもの姿でみていこうということで、生きがいや自己実現を育む生涯学習施策を展開しているのである。


 また、喜界町の人びとに学びの風をふかせよと、公民館講座や定期的な講演会などの充実はもちろんことであるが、講座計画の年間行事に入っていなくても、大学の教師や島外からの文化人が喜界島に訪れる情報を得ると、学びの場を即座に設けていく努力をしていることである。
 
 特色ある教育の施策として、喜界町では、地域の文化と産業からの郷土教育、地域に根ざした喜界町らしさを強調しているのである。これは、町づくりは人づくりという基本理念からふるさとと自らが誇りをもてる教育実践の推進を目標に、子どもの生きた現実の姿を大切にしながら、主体的な生き方からの進路選択や生き甲斐をもてる生涯学習を積極的に展開しているのである。
 
 喜界島の「3・4年の社会科のわたしたちの喜界町」の特徴ある副読本


 小学校の3年生と4年生が使う社会科の副読本は、各小学校の小学校社会科の研究担当する教諭によって、喜界町教育委員会の責任のもとに編集されたものである。この副読本は、「身近な校区や喜界町を中心に、人びとのくらしをよくするために、どんな工夫や努力がされているか学習」するために作られたものである。

 子ども達が勉強しやすいようにと「たくさんの写真や資料をのせているが、子ども達が「自分で考え、友だちと話し合い、調べたりして喜界町や鹿児島のようすを、くわしく知るために」として編集されたものである。郷土を社会科という教科の側面から認識していこうとする副読本である。


 小学校の3年生と4年生の社会科の教科に、身近な郷土の地理や暮らしを子ども達が歩いて、調べ学習をしていくための副読本になっている。そして、「喜界町をもっと健康で明るく、住みよい町にするためにはどうすればよいかを考えるように」と、明確に喜界町の将来の発展を身近な暮らしのなかから子ども達に描いてもらうために書かれたものである。


 副読本のスタイルが子ども達に歩いて体を動かして、目でみてわかるような観察や大人から話を聞いたりして、子ども達自身の好奇心をもてるように工夫されている。地域の課題発見や地域課題の設定を社会科の副読本として、積極的に編集されている。調べ学習や問題に対する問いかけが数多く用いられていることは、子ども達に知的な探検心を利用しようとする教育的な工夫がみられるものである。


 また、子ども達自身で話し合うことをして、目でみて観察したこと、調べたことを絵地図にしてまとめている。これは、子どもの達が自分一人で問題を認識していくという個人中心主義的な認識ではなく、友達仲間と共に考えながら学び合っていくという共生的な社会科の知的認識をしているものであり、社会科を子ども達の小さなグループをつくりながらの社会性的発達を伴って学習をしていこうとする姿勢が副読本にあらわれているのである。


 教師は、子ども達に地域の課題発見や課題設定ができるように、航空写真や集落の写真、グラフ化したわかりやすい資料、町の仕事の写真など豊富な資料を3年生や4年生の子どもでもわかるように工夫して提供している。そして、子ども達に観察学習や調べ学習など実際に歩いて行動して体験的に認識して、地域の課題を発見させながら問題を問いかける授業方法のための副読本をつくりあげている。


 総合的学習の学力をどうそだてるかということで高階玲治は、「これまでの学校教育において最も欠けていた能力の一つが、課題発見や課題設定の能力だったからである。多くの子どもは、問題は与えられたもの、答えはみつからもの、と考えてきた。授業そのものが、教師問題を与え、子どもはひたすらそれを解くという形態で続いてきた。

 しかし、世の中はそうではない。何が問題かきわめて難しい状況もあれば、解答がでないで立ち往生する場合もある。大人はいつも解決不可能な問題に遭遇している。学校教育だけは、教師が問題を把握し、それを小見出しに子どもに与えて解けるように導いていく。そこから「問うことを忘れた」子どもが大量に出現する」。)


 副読本の喜界町の人びとのくらしでは、「喜界町には、どんなしごとがあるか、自分たちの校区と比べてみよう。」住む土地がちがうと、しごとにどんなちがいがあるのでしょうか」と、問いかけている。


 そして、「喜界町では農業をする人がたくさんいます。なかでもさとうきびがさかんです。昔は田で米をつくる人もいたのです」として、さとうきびつくりがさかんになったのでしょうかと、子どもに問いけているのである。さらに、さとうきびのほかに、すいかやメロン、マンゴー、トマト、花などの農家をあげている。
 
地域の産業を理解する総合学習


 喜界町の農作物の中心は、さとうきびということから、さとうきび作りの様子をくわしく副読本では描く。製糖工場や荒木集落などの自家製の手作りの製糖工場の紹介をしている。さとうきびの植え付けの時期、とりいれの時期などの農事のこよみを提示しながら「さとうきびを作っている人びとはどのようなくふうをしながら、さとうきびを育てているのか調べてみましょう」と問いかける。さらに、副読本では、メロン作りの様子、きく作りの様子について描いている。


 工場で働く人々として、製糖工場の仕事が副読本で紹介されている。工場では70名ほど働いていること。農家でとれたさとうきびが工場までどのように運ばれていくかということの調べ学習が問題提起されている。道路ができることによって、さとうきびが工場まで運ばれていくうえで、大変に便利になったことが副読本では、のべられている。


 喜界島の特徴としての集落ごとの手作りの工場と、大きな製糖工場との違いなども子ども達に調べ学習としての問題提起がされていくことも大切なことであるが、この問題については、副読本で全く語られていないのが残念である。


 さとうきびがどうやってぶんみつとうになるか調べてみよと副読本は、問題提起する。喜界町での黒糖焼酎についても、多くの人々に喜ばれているという記述だけではなく、付加価値を高めている農産物の加工商品として、積極的に位置づけていく記述が必要である。喜界町の産業を振興していくうえでの基本的な視点をもての副読本の作成が求められているのである。


 子ども達が地域発展に夢をもたせるように工夫がされている。ていくように、現実の地域産業振興の新たな動きに伴う人々の努力や工夫の様子を記述しながら教師が未来思考的に地域の課題発見や課題設定から問題解決能力の形成のための調べ学習の問題提起をどれだけ与えているのかということが最も大切なことである。


 総合的学習の学力をどう育てるかを提唱する高階玲治は社会科教育のなかで問題解決能力の形成の重要性について、次のように指摘する。「社会科は従来から問題解決能力の形成が重視されてきた。それはこれから変わらぬ社会科の基本である。ただ、単元構成で学ぶ社会科の授業は時間的な余裕がないままに問題解決を十分こなせないできた。

 そのため、教科書中心の形式知としての知識獲得で終わっている場合が多かった。それに対して総合的学習では地域へ出かける機会が多くなることから、地域での体験的な学びを広げることが可能になっている。


実際の学習活動の場で、ある時は見学し、ある時は調査し、というように本来社会科で実施すべき学習活動を行えるようになるのである。

 そのため教科書中心の学びとは全く違った学習活動が展開される。それは実際の生活に生かせる体得的な知の獲得であって、必要な資料を収集したり、調べたことを効果的に表現したりするなど学習スキルとして徐々に身に付いていくのである」。


 この意味からも最近の喜界島農業の特徴として、ゴマの生産が伝統的につくられてきたのが、健康ブームにのって、作付面積が急速に拡大したことも特記することである。ゴマ生産は、喜界町農業所得の新たな大きな位置を占めるようになっている。


 また、肉用生産牛飼育など、喜界町の台地の荒れ地を開墾した新たな中核農家などの記述もないことも残念である。副読本の作成においては、小学校の教諭だけではなく、農業や地域産業振興に関連する関係者との郷土読本の教材の開発がされることが求められているのである。


 この際に、未来思考的に問題設定して、喜界町で育ったことに対する誇りや喜界町で生きていくうえで、子ども達に将来への夢をもたせていく方法が基本的視点として必要なことである。


 この副読本が5年生への社会科の産業の授業にどのように発展していくのか。また、小学校での歴史教育や国際理解教育などとの知識とどのように関係していくのかという視点が必要である。


 社会科の領域や単元が、それぞれ細切り的なまとまりのないものにバラバラに切り離されている状況であれば、本来、小学校の発達段階における生活や体験からの社会科の認識を行っていく段階においては、学力の定着が十分についていくものではない。教えられても直ぐに忘れてすまう試験のための学力にすぎなくなってしまう。


 さらに、副読本での地域教材が理科や国語などの他の教科との関係でどのように融合していくのか。これらの融合との関係で総合的な学習の時間における体験的が、教科での体験的な認識のなかで位置づけられ、それが、子どもの発達段階に即した課題発見や課題設定の能力のための理性的な抽象的認識へと発展していく基盤になっていくのである。
 
 喜界島の荒木小学校と校区住民の地域学による教育実践

 荒木小学校の校区は、地域に根ざした教育活動の推進として、伝統文化の継承として8月踊りや棒踊りの実践、校区の歴史や文化、産業や自然遺産の再点検ということでマップづくり運動を展開し、教育活動としてさとうきびやゴマの栽培、落花生の総合単元学習などのとりくみをなど地域の暮らしや文化の教育課題を積極的にとりあげている学校である。ここでは、学校教育活動に地域住民が積極的に参加していることが特徴である。


 地域に誇りをもたせていく教育実践を進めていくうえでは、教科の枠組み内だけで、それぞれの単元ごとも関連性のないバラバラの教育実践では、子ども達は、生きた誇りをもつことはできない。学習の生活にかかわる課題をおしえていけば、教科の枠組みを超えていくことは必然的なものであることをクロスカリキュラウの理論と方法を提唱する野上智行は次のようにのべる。


 「学習の生活に係わる課題の追求が教科の枠組みを超えることは、先に取り上げた「地球環境問題」の議論に関わらず、これまでの教育体験からも自明のことである。「教科をクロスする授業」の特徴は、こういった課題をひとつの枠組みに閉じこめることをせず、関連するすべての教科において、それぞれの教科の固有のアプローチ法によって追求することにある。

 このことは、結果として、学校カリキュラム構造の変化を求め、教科の構成と内容の変革を求め、学校と地域(社会)とのかかわりの変化を要請することになるであろう。学習者の生活に身近な課題であれば、どのような課題でも教科をクロスする学習を引き起こすというのが前提である」。


 地域の生活や生産課題を教材として、とりあげ、学力の定着と結びつけていくならば、クロスカリキュラムや総合単元学習が必然化していくのである。地域に根ざした教育実践が、学力と関係なく、子どもたちの体験的活動に終わるならば、総合単元学習やクロスカリキュラムの問題につながっていかない。総合的な学習の時間の導入によって、各学校でとりくまれている地域での体験活動が、総合単元の学習に発展していかないことは、それらが、学力問題と切り離されているからである。

 従前の学力問題を生きる力という生活との関連や現代的な課題との関係で、学力の定着化、生きていくための学力として、体験的学習を重視したのが、総合的な学習の時間の導入の意義であったのである。


 荒木集落は、白ゴマの発祥地であるが、多品種の複合経営の農家が多い。喜界町全体で地下ダム建設して、畑地かんがい施設をつくりあげているが、荒木集落は、その対象外地域になっている。


 荒木集落はもともと岩が多い畑地であり、田圃もない貧しい地域であった。集落別に個人の手作りの製糖工場が根強くのこっているのも喜界町の特徴であるが、その中心になっているのが荒木集落である。黒糖工場は、地域住民で作成したふるさと探検マップにのっている。


 農業基盤整備には、集落のなかで、様々な意見があり、導入も遅れ、トラクターを導入して農業の省力を行った農家は、自力で客土をして農地の基盤整備をしたほどであった。荒木集落は、岩が多く、トラクターを導入する土地条件にも適していない地域であった。


 しかし、農業基盤整備によって、その問題が解消した。この農業基盤整備の事業を集落で進めていくうえで、役員が特別に気をつくったことは、役得やゴネ得がないように、情報公開を集落の有線放送を流したことである。集落住民の意志決定が民主的に行われるように、途中経過をガラス張りにした。荒木集落の運営は、集落会の規約を尊重して、運営を行っているのが特徴である。


 もともとの畑作地帯であり、それも条件のよくない岩を含んだ畑地ということから、集落のしばりを強くして、農業経営を行ってきたというよりも、個々の農家の自発性と創意工夫によって貧困と闘ってきたという歴史をもっていた。


 トップリーダーによって、集落がまとまってきたのではなく、集落の住民がみんなで話し合って地域の振興をしてきたのである。イイタバというように、集落のなかで親戚や隣近所による助け合いの労働が伝統的に行われてきたが、集落全体としての強い絆があったわけではない。嫁いでいくときには、持参の畑地をタカとしてもっていく習慣があった。 


 荒木の集落会は、文化伝承活動、環境整備・環境美化活動、防火・防災、共有地の管理・保全、スポーツ活動、青少年育成活動などを行っているが、夏の盆踊りなおは、実行委員会方式でとりくみ、若い人が活躍できるように夜店を高校生や若者が出せるように、また、ビンゴーゲームなどをとりいれたりして、青年達が主体的に運営し、集落全体で盆踊りを楽しんでいる。お盆の夏祭りは、若者が帰郷して、ふるさとの友人に会えるのが楽しみの場になっている。


 地域の伝統文化継承として、荒木伝統文化保存会の指導のもとに、校区内の高校生、中学生、小学生が共に伝統文化の継承のために棒踊りや8月踊り、島唄などの練習に励んでいる。棒踊りは大正のはじめごろ種子島の野間集落から伝わってきたものであるが、荒木の棒踊りは動きがはやく、青年団が催すものであった。


 荒木集落の8月踊りは、自分たちで唄って踊るということで、声のだすときと踊りがなかなかあわないところに、子ども達は苦労するのである。二人で唄いあわせるのも技である。子ども達が唄って太鼓もたたき、地域の人達が踊るということをしている。地域文化祭や各種の地域行事に、高校生、中学生、小学生と活躍するのである。


 この荒木集落の伝統文化の継承には、集落の伝統文化保存会や老人クラブなどの全面協力によって、子ども達への伝承文化における技の継承がされているのである。地域の大人達と子ども達との交流として、老人クラブと小学生とのグランドゴルフの大会や荒木地区があり、また、大人と子ども達がともにプレイするバレーボルの行事がある。


 荒木集落では、子ども地域の宝として、伝統文化の継承を子ども達に集落ぐるみで伝え、青年たちが活躍できる盆踊りの行事を企画している。そして、子どもを集落で見守っていくことする様々な行事が行われている。それらが、地域行事として単独におこなわれるのではなく、学校行事との連携をもちながら展開しているのが特徴である。
 
 地域教材開発と地域再発見のための住民ぐるみのマップづくり

 自分たちの校区を見直そうということで、集落内のふるさと探検を子どもから大人まで集落ぐるみで詳細な住宅や遺跡の入った地図をみながらコースを歩き、自分の住む地域の良いところ、悪いところを点検した。これは、今後の地域づくりや教育に生かしていこうとすることが目的である。
 


 参加者は、気がついたことを個々が地図に書き込み、コース歩きが終了後に、荒木小学校に集まって、みんなで探検の成果のマップをつくりあげた。事業にあたって、集落地図や探検マップ作成にサポートを受けている。この成果は、荒木小学校の玄関ホールの近くの壁に、ふるさと探検と夢マップとして、荒木地区の点検項目が地図に塗られて披露されている。
 


 荒木小学校の児童たちが探検隊として積極的に参加し、実際に歩いて大人たちと一緒に見てまわることによって、自分たちの集落の良い点、悪い点を子ども自身で考えてことは大きな教育的成果である。そして、さらに、大きなことは、大人たちと一緒に考えたふるさとの点検の確認を地図としてまとめたことであり、地域を良くしていくための学修の課題をも見つめたことである。


 このふるさと探検活動は、荒木サマガーと呼んで実施した。1960年代まで荒木地区では、トビウオ漁などの漁師の集団があり、サマガーは、トビウオの方言である。サマガーの漁は、集団の組をつくり、親方を中心に結束力が強く、地域の行事にも大きな力をもって、積極的に参加しているのである。


 ふるさと探検活動は荒木集落の地域興しの結束力ということになった。現在でも年輩者のなかでは、昔の荒木の漁業について語る。子どものときでも兄弟でロープを編んだりして手伝うことが多かったのである。


 集落内を点検するのかで、生産日本1のしろゴマが集落内のあちこちで干されていることにあらためて伝統的につくられてきたしろゴマについて再認識する。ゴマが路地に干してある風景がすばらしく感じたという参加者の意見である。


 石垣にゴマが干してあるのも美しい風景であった。集落内のあちこちに作られている貯蔵庫の役割をしている高倉が10ヶ所、現在でも伝統的な貯蔵法が荒木集落で生きている。昔ながら高倉が残っているが、説明書をつけたらどうか。


 製糖工場が集落内にあることに、昔ながらの伝統的な手作りの黒糖づくりを大切にしている荒木の集落の人々の伝統を大切にする意識を確認する。黒糖工場マップができないか。工場直売か見学ができないかという意見が参加者からでている。


 町指定の文化財であるウリハーという横坑式に井戸を掘り下げていく伝統工法の遺跡が荒木の個人住宅内で大切に管理保存されている。井戸をまっすぐにたてに掘っていく以前の工法として、井戸を掘っていく歴史の遺跡としても貴重なものである。


 参加者は、現在は、個人管理に任せているが、負担が大きいと思うので、みんなで協力して手伝うことができないだろうか。具体的な解決策として、現在行っている美化清掃の時にここも一緒に清掃できるように所有者の方と話し合うということにふるさと探検の話し合いになったのである。


 昔からの魔よけとしてT字路に掘られた「石敢當」、荒木集落では、自然石彫りの昔から伝わるものが残されている。昔の馬の放牧地であるメン山があり、ここに馬頭観音や神木があったが、その由来の案内板などがほしいという参加者の意見である。馬の放牧地などの管理運営は荒木集落としてどのように行われていたのか。荒木集落の人々の伝統的な生産と結びついた地域の共同性の文化とも絡めて、考えていく課題でもある
 以上にように参加者は荒木集落の文化財や地域産業における文化性などを学びながら、荒木集落の地域づくりについての具体的な解決策なども提案している。このふるさと探検のマップづくりをどう具体的に学校教育行事に生かしていくのか、地域の教材として授業にいかしていくのかが今後の課題であるが、子どもたちは自分たちが参加したふるさと探検の成果をまとめたマップを毎日、玄関ホールの壁でみているのである。
 
  総合単元クロス学習カリキュラムの教育実践

   荒木小学校では、苗植えから黒糖作りの一貫した体験活動を総合的学習の時間で実施している。黒糖を使ったお菓子つくりなども地域の人やPTAの全面的な協力で推進している。

 荒木小学校では、平成18年度から総合単元クロスカリキュラムの実践をはじめている。この実践は、生命と生命の関わりー落花生との出会いをとおしてーという単元名で20時間の年間をとおしての学習を設定している。

 総合的な学習の時間を利用して、農業に対する理解と食に対する理解を深めさせるということで、具体的に落花生の栽培活動や収穫を通して学ぶものである。落花生の成長過程にみられる葉っぱのつくりや働き、受粉や結実の様子を観察させ、恵まれない土地においてもたくましく成長していく落下生について学ぶ。収穫した落花生をいろいろと調理に生かし、食の楽しさ命の関わりについて学ぶという教育目標をたてている。

 落花生を使ってどのような調理ができるのか。地域の食の推進委員を学校教育での地域の先生として招請し、調理の方法や実際の調理を体験させていくことを。
 落花生の秘密を発見するこの学習課題として、1,とてもきれいな花をつけていく。2,葉いっぱいに水を貯める。3,自家受粉をする。4,子房柄というところが成長して実をつける。豆類は地上にできるものが多いが、落花生の秘密を知る。5,土のなかを掃除する。6,栄養価が高い。7,いろいろな調理に工夫できる。8,作物を育てるには、充分な栄養が大切であり、小さな容器に植えるだけでは養分が足りず実が小さい。9,堆肥が種を大きくし、新しいたくさんの実をつくる。

 その実を食べてわたしたちは成長する。排泄物を使って堆肥を作る。まるで、生き物の世界は生命が上手に回転していくようだ。植物を大切に育てることは、自分たちを育てていくことにもつながるとしている。