社会教育評論

人間の尊厳、自由、民主的社会主義と共生・循環性を求める社会教育評論です。

再生可能エネルギーとコミュニティでのESD

再生可能エネルギーとコミュニティでのESD
      神田 嘉延
 
 再生可能エネルギーは、集中型で大規模な発電からの脱皮
 
 再生可能エネルギーは、石油・石炭、原子力から分散型で自然と共生のためのものです。大量エネルギー創出生産に終止符をうつものであります。人々が暮らす地域で分散的エネルギーを創出するもので、メガソーラーを山間地に大規模に開発するものでもありません。
 
メガソーラーは再生可能エネルギーではない
 
 メガソーラーは、森林を伐採して、水源を破壊し、土地を造成して、森林や水田など自然と共生していた人間の暮らしのもつ防災機能をなくし、電磁波や発光の人体被害をもたらします。また、自然景観や生態系を破壊し、歴史文化遺跡を消滅させます。
 
 メガソーラーには、膨大な設備投資が必要となります。そして、大規模な発電ということから地域でのエネルギーをまかなうということではなく、広い範囲での電気利用のために送配電網が必要となります。送配電ということで、途中で電気が消耗していくのです。また、配電の需要と供給のバランスがくずれることにより、広い範囲で停電が起きるのです。大規模な発電網では、発電量のロスが大きく働きます。
 
  エネルギーの地産地消・コミュニティ単位で発電
 
 
  コミュニティ単位で発電をして、それを蓄電し、コミュニティで利用していく新しいエネルギーのしくみが社会的課題になっているのです。つまり、スマートコミュニティの創出です。また、各家庭でのスマートハウスや工場やオフイスでのスマートビルなどが課題になります。
 
 それらは、集中的な大規模なエネルギー創出ではなく、日常的な暮らしや仕事の場で作られます。そして、エネルーギー創出施設と日常の暮らしや仕事が矛盾しないように工夫されます。つまり、共生の配慮が意識的にされるのです。
 
 再生可能エネルギーでも技術方法に伴う、様々な弊害が起きます。万能ではないのです。それを除去していく科学技術の発展や住民参加が必要です。再生可能エネルーの施設設備には、目的意識的に環境共生や人命・身体被害を想定する開発が要求されます。大規模な発電システムは、住民参加がなく、とかく僻地などにつくらえることが多いのです。そして、自然破壊や人々の生活に大きなマイナスをもたらすことがあります。
 
 スマートコミュニティ、スマートハウス、スマートビル等では、住民が日常的に電気の使用や設備など管理をしながら問題点を自ら発見していくようになるのです。そこでは、エネルギー創出の参加が必要になり、地域やビルに蓄電していくしくみに変わります。
 
  地域での蓄電によって、大規模な発電方法や電気の送配電網や広域的調整は、必要なくなるのです。膨大なロスがなくなり電気の効率的な製造のしくみに変わるのです。電気は、照明や家電製品を動かし、暖房等の熱に転換するばかりではなく、電気自動車の普及によりガソリンに変わる時代がくるのです。
 
 マイホームやビルでの発電によって、台風や大雨で住宅被害があれば自ら専門家の工務店等に依頼して修理をしてもらうのと同じように、再生可能エネルギーの施設のトラブルを即時に専門家に依頼することができるのです。そのための基礎的知識や訓練は、将来的に学校教育でのリテラシーの課題になっていきます。
 
 再生可能エネルギーと称してのメガソーラーや大型風力発電などは、開発による自然破壊、電磁波問題、反射光、風による倒壊被害など多くの問題が起きます。再生可能エネルギーは、技術的な発電方法の問題ではなく、自然循環のエネルーギーとしてとらえることが必要で、自然と共生していく人間の知恵からのエネルギー創出です。再生可能可能エネルギーは、自然破壊するメガソーラーや大型の風力発電の開発設置ではないのです。
 
エイモリー・B・ロビンス・山藤泰訳「新しい火の創造」
 
 エイモリー・B・ロビンス・山藤泰訳「新しい火の創造」ダイヤモンド社出版は、再生可能なエネルギーの理念やビジネスで未来社会を考えていくうえで大いに参考になります。
 
 本書では、集中型火力発電や原子力からもっとも安い分散型再生可能エネルギー創出をあげています。また、同時にエネルギー消費の効率をあげていくことを提案しているのです。福島の原発事故で世界のエネルギー創出のあり方が根本的に変わったとしています。世界中で原発を止めて、新しい再生可能エネルギー創出とエネルギー消費の節約に向かっていくことが新しい人類的課題となったとしているのです。
 
 また、化石燃料依存からの脱皮は、世界の安全保障の面から、その構造が変わっていくとしています。エネルギーは、世界の紛争、汚染、リスクの源であるというのです。石油をめぐっての争いが軍事衝突につながっていくのです。石油依存の経済コストとして、中東をめぐる安全保障のコストの問題が大きくあります。
 
 中東での安全保障の軍事費用は、石油採掘現場で支払う金額以上に、大きいというのです。その軍事費用は、米国人が支払うエネルギー代金総額をはるかに上回っているのです。また、石油の施設もテロに対して脆弱です。
 
 燃料の非化石は新しい時代をつくりあげるのです。デンマークは、2008年に建てられた住宅は、1977年以前の住宅の半分以下のエネルーギー消費の構造になっています。新規に建設された発電設備も再生可能エネルギーが電力と熱利用に同時に利用できる発電機です。デンマークは2050年までに完全な脱化石燃料の脱却を計画しているのです。
 
 エネルギー需要を広汎な技術供給によって、精密、かつ得になるように合わせることができるようになっているのです。電力を得ることは、もっとも安いときに、もっとも高価なときには停電して、不便なしに電力を利用することができるようになっている時代が現実的に可能なのです。
 
 分散型の再生可能なエネルギーの時代には、これまでとは違う車の設計が必要です。超軽量の素材によっての車の製造という技術革新です。燃料タンク、車体、車輪に至るあらゆるところで軽量化の開発が求められるのです。
 
 そして、ガソンリンエンジンから電気自動車の時代となるのです。つまり、自動車の製造方法が抜本的に変わっていくのです。さらに、また、新たなバイオ燃料としての藻類の開発を次世代の開発技術になるのです。
 
 住宅、学校、高層オフイス、工場をはじめとする建物をどのようにすればエネルギー削減になるのかを考えていく必要があります。建物の省エネルギー化には、スマートウインドウの開発、改良型蒸発式冷房の開発、高度強化断熱材の利用があります。さらに、温度が上がると溶けることで熱を吸収する相変化素材の利用、LEDの利用など様々な工夫によってのエネルギー利用削減が可能になるのです。
 
 ものづくりの工業の再構築では、無駄な大量の廃棄物の工場生産からの脱皮です。典型的に鉱石を掘り出してわずかしか使わず、全部すててしまうプロセスの現代工業とは正反対に、空気、太陽光、水、土壌など以前に作られた有機物の原材料から製品をつくる工業への発送転換です。
 
 自然循環型の工業資源と未来へのエネルギー設計

 くもは繊維より強い絹織りの網に変えます。樹木はステンレスのスチールよりも強い繊維になります。また、貴重な香木、良くきく薬や無数の製品に交換されれます。自然循環型生産の発想は、希少な資源を使い尽くしたり、自分の出した廃棄物で窒息したりすることなく、わずかなエネルギーを使って、自分たちのニーズに応えるのをどのようにすれば可能になるか示してくれます。ロビンス氏は以上のように新たな自然循環型の素材を利用した全く新しい工業の構築をのべているのです。
 
 自然がもつ無尽蔵なエネルギー源は、分散型再生可能なエネルギーを可能にするのです。再生可能エネルギーは、コストが高いと言われます。しかし、風力発電太陽光発電、水路等小型水力発電バイオマス発電は、コスト削減が行われています。
 
 工場のゼロエミッションなどは持続可能な循環型生産システムとして注目されることです。南九州は焼酎生産が活発な地域です。例えば、霧島酒造では焼酎粕が一日あたり約650トンといわれます。それを発酵させ、メタンガスにして、それを工場内の焼酎製造工程のボイラー燃焼に44%利用し、56%をバイオガスによる発電に利用しています。3基の合計で850万KWH/年の発電電力量です。バイオガスを蒸留設備の燃料と乾燥設備の燃料に利用して、それを飼料にしているのです。現状は、2000世帯分の電力を売電していると会社はのべているのです。
 
 ところで、電力を貯蔵する技術開発が進んでいるのです。分散型発電は地域に設置されるため、基本的な電力供給需要に対応するのに、大規模な電力系統に頼る必要がないのです。分散型発電は、送配電系統に起因する停電のリスクはないのです。電力システムを変える大きな力は、電力需要家であるとロビンス氏の強調する意見です。
 
 ロビンスは、選択肢は多いが未来はひとつであるとのべています。2050年の未来から今を振り返る思考方法をとっています。電気自動車は40年前の重さの3分の1になっています。
 
 コミュニティは、自動車ではなく、人の周辺につくられています。遊びや買い物は、歩いて行ける場所になるのです。食料の大部分は、10マイル半径の顔見知りの農家で仕入れる人が多くなります。人々は、カーシェアリング、超軽量鉄道、小型バスでの移動が行われます。働く人は、オフイスへ行くが、3日ないし、4日になるというのです。
 
 2050年の目標の6つの課題
 
 2050年の目標にたどりつくには、教育、イノベーション、リーダーシップです。そして、政策と規制の変更が必要です。目標の達成には、6つの課題があるとしています。1つは、自動車産業の転換です。2つは、自動車の走行距離、荷物の異相・重量の大幅な削減です。
 
 3つは、エネルギー消費の効率の高い建物を大規模につくりあげていく。4つは、再生可能エネリギーからの熱と電力の供給を増やすための国家経済を推進すること。5つは、再生可能エネルギーコストの削減をしていくこと。6つは、分散型再生エネルギーの電力系統の販売量を増やす方策をしていくこと。以上の6点を目標を達成するための課題としているのです。
 
 正しいリーダーシップが発揮されるのであれば、新しい火の創造が可能であるとするのです。新しい火の創造は、命令的なものではなく、寛容なものだというのです。誠実な価格で公正に競争しながら火の創造を行うことを要請するのです。他人に賛成を強要するように求めるのではなく、共に力を合わせ、共有することから仲良く火を創造するのです。
 
 新しい火の創造の著者は、ビジネスの視点を含めて、誠実な価格で公正に競争しながら、コミュニティを基礎とした分散型の再生可能なエネルギーを創出するのです。それは、未来社会創造を展望しくのです。この創出には、共に力を合わせて実現していくことを指摘しています。そこでは、寛容の精神が必要です。教育の力も加味しながら実現していくものです。
 
 貧困な国のエネルギーの課題
 
  貧困な国では、エネルギーの消費効率は極めて悪いのです。電力供給から切り離された時代遅れのエネルギーを使っています。この世界での対象者は16億人にあがるとされます。さらに、10億人が高くて使えないというのです。世界の5分の2は、エネルギー貧困状態にあるのです。
 
 これらの人々に、灯油から蛍光灯の照明にするために、太陽光発電が利用されるような教育運動が起きています。それはベアフットカレッジという名称をつけた運動です。文字の読めない女性たちを教育して、太陽光発電のエンジニアに育成します。その技術を自分の村で使います。自分達で、太陽光発電を建設して維持管理をしているのです。太陽光発電で効率のよいLED照明を使い、娘達が夜に読書して勉強できるようにしているのです。
 
 簡易なソーラー発電は、ランプを使用していたときよりもお金の余裕ができました。そこでは、蚊帳のネット、清潔な水など貧困化から立ち上がることができたとしています。まさに、地域での分散型の簡易なソーラー発電によって、再生可能なエネルギーの転換によって、自立的な経済発展の展望が生まれているのです。ここで、まず大切なことは、どのように教育を提供するということではなく、どのように優れたコミュニティをつくるかです。教育は、そのうえで達成されていくという考え方です。

 

環境問題と地域の自立的発展―離島・へき地を中心にして

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